アウトレイジ

役者の演技力に魅せられた


採点 ★★★★

 週刊文春の映画評が星4つ、5つと良かったので観に行った。バイアスが掛かっているなと感ずる評者もいるが、真っ当と思う森直人氏が高評価だったから。
映画は、途中だれを感じさせることも無く、予想以上に面白かった。

 北野武監督は「アウトレイジ」(2010)、「アウトレイジ ビヨンド」(2012)、本作と三部作を7年に亘り製作してきたが、本映画を見て、それぞれが連携して大きな流れを作っていることが良く解り、大きな構想力に感心した。
皆さんにもこれら三部作全てを観ることをお勧めしたい。
『仁義なき戦い』、『ゴッドファーザー』に通じるシリーズものを観る楽しみがあると思う。


 物語は、関東の山王会、関西の花菱会の抗争から7年経ち、山王会は壊滅され、花菱組の配下になっている。逃げのびた大友組組長大友(ビートたけし)は在日フィクサー張会長の庇護の下、韓国済州島で過ごしていたが、花菱会幹部の花田(ピエール瀧)が騒動を起こしたことより、ヤクザの抗争が動き出した。
 花菱会会長は前会長の娘婿 野村(大杉漣)に引き継がれており、金を稼ぐこと第一にハッパをかけ、筆頭幹部の西野(西田敏行)、若頭補佐の中田(塩見三省)は、これを苦々しく思っている。
 張グループとのトラブルを口実に、野村会長は中田に反撥する西野を消すよう命じて、花菱会、山王会、張グループ 三者の抗争が始まるが‥。

 映画は、色んな人物が浮かんで興盛を誇っては消えていき、無常という風が吹いているような儚さを感じた。

 それから、喜劇と悲劇 あるいは滑稽と悲惨が、表裏一体である様子も浮かび上がっている。タケシだからとお笑いを期待していたからかも知れないが、どす黒いユーモア感は それ以上だ。
 北杜夫が悲劇の裏に喜劇があることを次のように書いている。
「チャップリンは少年時代、家の近所にあった屠畜場に連れていかれる羊の群れから、一頭が逃げ出すのを見た。みんなが追い回し、ぶつかったり転んだりした。其れは正真正銘の喜劇であったが、羊の身にとっては、のっぴきならぬ悲劇である。チャップリン作品のおかしさ、もの悲しさはこうして生まれている。」

 描かれている人物像は本物のヤクザ以上に怖く、特に西田敏行、塩見三省の演技は二作目も相手を追い詰める所が凄かったが、本作では更に奥行きが出て素晴らしい。幹部の出所祝いパーティで殺されたと思われていた西田敏行が現れて挨拶する場面は、何を言うかなと見守っていたが紋切型にならず感心した。
塩見三省は今回は威勢のいいところは抑え、上司の理不尽さに耐える様子を、サングラスの奥で目じりがピクピクする演技をして中間管理職らしい苦渋を良く現わしている。

 ヤクザ映画には、役者の意気なカッコ良さを知らず知らず期待しているが、シリーズを通じて感心した俳優は、歯切れのよい椎名浩平、チャラチャラしているが突き抜けた様な経済ヤクザの加瀬亮、重厚さを増した三浦友和である。彼等は良い意味でこちらの想像を越えた演技を見せており、これを引き出した北野監督も凄いと思う。

 本作は、タランティーノ監督のように即物的にお手軽に殺戮を繰り返すところに物足りなさもあるが、俳優陣の演技を観る楽しみが、それを上回っている。
  


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ダンケルク

主人公がどうなるか、ハラハラドキドキと引っ張る力に欠けていた


採点 ★★★☆☆

 評判が良いと聞いたクリストファー・ノーラン監督の戦争映画「ダンケルク」を封切り2日目に観に行った。中の上の入りである。
 先ず気付いたのは、銃弾の音が生々しく、金属に当たって跳ね返る音などこちらが痛く感じる程だ。「硫黄島からの手紙」を劇場で観たとき、こちらも戦場に居ると錯覚するような銃弾の音に感じ入ったことがあるが、それ以来である。
これらの音響効果はTVで観ても良く解らないだろうと思う。
 それから70mmフィルムで撮影したという映像は、海と砂浜と空の広がりが豊かで仏北岸の薄暗い天候をもリアルに捉えているように感じた。

 1940年6月ベルギーと国境を接するフランス北東部の都市ダンケルクは、ドイツ軍に包囲され、40万人の英、仏軍は袋のネズミとなり、海岸よりイギリスへ撤退しようとしていた。
英軍兵士トミー(フィン・ホワイトヘッド)が町を歩いている時、銃撃を受ける場面から始まる。バリケードに飛び込み、何とか逃げ出して、奥に入っていくと何百人という兵士が脱出のために並んでいる海岸線が広がっています。
この画面の転換は鮮やかです。乗船の列に入れてもらえず、知り合った無口な青年ギブソンと、負傷した兵士を担架で運ぶことで無理やり乗船しようと試みます。
海岸は遠浅で沖に伸びた仮設の桟橋でないと大きな船が接岸出来ません。
 ドイツ空軍の爆撃の中、二人は苦労して乗船出来たにも関わらず、船は傾き海に海に投げ出されます。

 一方、海と空からの支援の動きも描かれます。
イギリスは、対岸の港町で多くの小型船を徴用し救援に向かわせます。ドーソン(マーク・ライアンス)もレジャーボートの小型船を出して、息子ピーター、その友人のジョージとダンケルクを目指します。
また英空軍パイロット ファリア(トム・ハーディ)は、スピットファイアー3機でドイツ空軍の攻撃に飛び立ちます。この空中戦や海上不時着の様子は、リアルで緊迫感があります。

 トミー達はドイツ軍の猛攻にさらされながら、必死で救助船に向かうが‥‥。

 ◆◆良かった点◆◆
 字幕に浜辺の英軍が1週間、一般の船が向かうのが1日、イギリス軍戦闘機が1時間と表示されます。初めは何か良く解りませんでしたが、実はそれぞれの所要時間で、それらの違う空間を巧みに描きながら、最後の戦闘の場面に収斂していきます。
これは、なかなか巧みな時空間の描き方でした。


◆◆残念だった点◆◆
 浜辺の英仏軍はひたすら猛攻を受けるばかりで重苦しく、防波堤で指揮を執る将校(ケネス・ブラナー)、民間船長、パイロットと戦場で英雄的な行動を見せる人間もいるのだが、主人公はズルをして乗船しようとしたり、救命ボートに群がる人々を銃を突きつけ拒絶したり、英国人のみと外国人を排除したりと戦場の嫌な面が多く描かれ感情移入出来なかった。
極めつけは、ドーソンの船がダンケルクに向かう途中、遭難船の一人の生存者を助けるのだが、その男がダンケルクに行きたくないとドーソンの息子に暴行し死なせてしまう所である。何かガッカリさせられた。
 また包囲した独軍の側は、全く描かれておらず全体を俯瞰できなかったことと物語の推進力も弱いと感じた。これらが残念だった点である。


 昔、フランス映画の「ダンケルク」(1965)を観た事を思い出した。部隊からはぐれた仏兵士(ジャンポール・ベルモンド)が、ダンケルクでアッチをフラフラ、コッチをフラフラしながら酒やタバコも楽しんで過ごす物語で大規模な戦闘ロケはあるものの悲壮感の無い日常感満載の作品であった。

 のんびりしたフランス人気質とでもいうのか、今回の凄惨過酷な姿とはかけ離れていた。33万人が救出されたというこの戦いの本当の姿はどんなものであったろうかと思わせられた。 


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ダンディー少佐

戦闘シーンは迫力があるが、詰め込み過ぎのせいか重苦しい西部劇


採点 ★★★☆

 1960~70年代に凄まじい暴力描写で僕らを夢中にさせたサム・ぺキンパー監督の有名になる少し前の作品である。
ダンディー少佐は伊達男少佐(Dandy )と長らく思い込んでいたところ、原題は、”Major Dundee”だったので、人名と解りました。アメリカ人には知らない名前が多いですね。
 本作は、1965年のゴールデンウィークに家族と封切館で観たのですが、ストーリーが入り組んで解り辛く、暗いトーンで西部劇らしくなく、良い印象はありませんでした。
2000年頃だったかな、作家村上春樹がHPの読者とのQ&Aで本作を評価していたので、確かめてみたいと思っており、今回NHK BSで放送があったので再見しました。

 南北戦争中の1864年、酋長チャリバが率いるアパッチ族は、中隊や村々を襲撃し、壊滅させていた。テキサスの北軍ベンリン砦に赴任したばかりのダンディー少佐(チャールトン・ヘストン)は、階級上昇の野心もあり、南軍捕虜からの志願兵20名を加えた討伐隊(騎兵隊)総員46名を編成し、アパッチを追う。
 狡猾なインディアンの待ち伏せで兵力の1/3を失うが、チャリバが逃げ込んだメキシコ領に進軍し追い詰める。当時、メキシコには、フランス軍が駐留していたが、急襲しその食料、軍馬を奪ったことより、フランス軍の追撃を受ける。
 北軍、南軍、アパッチ、フランス軍が入り乱れる 三つどもえ、いや四つどもえの戦いを描く重厚な西部劇である。

◆◆良かった点◆◆
 今観ても戦闘のリアルさは健在で、ラストのリオ・グランデ河でのフランス軍とのサーベルを抜いての激闘は、動きにくい水中にもかかわらず迫力があり、ストップモーションは無いものの後日のぺキンパー・タッチを彷彿させる。
当時、西部劇に正規フランス軍が登場するものは珍しく、隊列を組んでいる中に、砲弾を撃ち込まれても再度隊列を組み直すシーンなどナポレオン時代の仏軍の戦い方は変わっているなと当時感心したことを思い出した。

◆◆残念だった点◆◆
 副官に南軍リーダーのタイリーン大尉(リチャード・ハリス)を配して、チャールトン・ヘストンと対決させるのだが、この愛憎劇はやや空回りである。
リチャード・ハリスも貴公子然として、髭もじゃの薄汚い男たちの中で浮いている感じがした。
ジェームス・コバーン、ウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソンとぺキンパー組のアクの強い名優達が出ているが、彼らも精彩を欠けていた。

 一番の欠点は、ストーリーにあり、①騎兵隊が兵站を考えておらず、食料・兵器・馬を失って、近くの村の仏軍を襲ったり、②毅然としていた主人公のチャールトン・ヘストンが村娘と恋仲になって大けがを負い、酒浸りに堕ちるが、味方の助けで抜け出し再び戦闘の指揮を執る点などご都合主義で共感できずスッキリしなかった。

 やはりスカッとした痛快西部劇ではなかった。
予算、スケジュールを優先する製作者と完璧な撮影にこだわる監督とのトラブルで監督解任直前まで行ったそうだが、男気を出したヘストンの助けで撮影を続けたとの事である。しかし、フィルムの編集権を奪われ、ペキンパー監督にとっては不本意ない作品になったようだ。今回観たのは、2005年拡大版で物語は良く追えるようになっていた。
 その後、サム・ぺキンパー監督は4年間干され、1969年の大傑作『ワイルドバンチ』で復活を遂げる。




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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

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