ダンディー少佐

戦闘シーンは迫力があるが、詰め込み過ぎのせいか重苦しい西部劇


採点 ★★★☆

 1960~70年代に凄まじい暴力描写で僕らを夢中にさせたサム・ぺキンパー監督の有名になる少し前の作品である。
ダンディー少佐は伊達男少佐(Dandy )と長らく思い込んでいたところ、原題は、”Major Dundee”だったので、人名と解りました。アメリカ人には知らない名前が多いですね。
 本作は、1965年のゴールデンウィークに家族と封切館で観たのですが、ストーリーが入り組んで解り辛く、暗いトーンで西部劇らしくなく、良い印象はありませんでした。
2000年頃だったかな、作家村上春樹がHPの読者とのQ&Aで本作を評価していたので、確かめてみたいと思っており、今回NHK BSで放送があったので再見しました。

 南北戦争中の1864年、酋長チャリバが率いるアパッチ族は、中隊や村々を襲撃し、壊滅させていた。テキサスの北軍ベンリン砦に赴任したばかりのダンディー少佐(チャールトン・ヘストン)は、階級上昇の野心もあり、南軍捕虜からの志願兵20名を加えた討伐隊(騎兵隊)総員46名を編成し、アパッチを追う。
 狡猾なインディアンの待ち伏せで兵力の1/3を失うが、チャリバが逃げ込んだメキシコ領に進軍し追い詰める。当時、メキシコには、フランス軍が駐留していたが、急襲しその食料、軍馬を奪ったことより、フランス軍の追撃を受ける。
 北軍、南軍、アパッチ、フランス軍が入り乱れる 三つどもえ、いや四つどもえの戦いを描く重厚な西部劇である。

◆◆良かった点◆◆
 今観ても戦闘のリアルさは健在で、ラストのリオ・グランデ河でのフランス軍とのサーベルを抜いての激闘は、動きにくい水中にもかかわらず迫力があり、ストップモーションは無いものの後日のぺキンパー・タッチを彷彿させる。
当時、西部劇に正規フランス軍が登場するものは珍しく、隊列を組んでいる中に、砲弾を撃ち込まれても再度隊列を組み直すシーンなどナポレオン時代の仏軍の戦い方は変わっているなと当時感心したことを思い出した。

◆◆残念だった点◆◆
 副官に南軍リーダーのタイリーン大尉(リチャード・ハリス)を配して、チャールトン・ヘストンと対決させるのだが、この愛憎劇はやや空回りである。
リチャード・ハリスも貴公子然として、髭もじゃの薄汚い男たちの中で浮いている感じがした。
ジェームス・コバーン、ウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソンとぺキンパー組のアクの強い名優達が出ているが、彼らも精彩を欠けていた。

 一番の欠点は、ストーリーにあり、①騎兵隊が兵站を考えておらず、食料・兵器・馬を失って、近くの村の仏軍を襲ったり、②毅然としていた主人公のチャールトン・ヘストンが村娘と恋仲になって大けがを負い、酒浸りに堕ちるが、味方の助けで抜け出し再び戦闘の指揮を執る点などご都合主義で共感できずスッキリしなかった。

 やはりスカッとした痛快西部劇ではなかった。
予算、スケジュールを優先する製作者と完璧な撮影にこだわる監督とのトラブルで監督解任直前まで行ったそうだが、男気を出したヘストンの助けで撮影を続けたとの事である。しかし、フィルムの編集権を奪われ、ペキンパー監督にとっては不本意ない作品になったようだ。今回観たのは、2005年拡大版で物語は良く追えるようになっていた。
 その後、サム・ぺキンパー監督は4年間干され、1969年の大傑作『ワイルドバンチ』で復活を遂げる。




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ショーガール

ショービズの成り上がり物語だが、ド派手な映像でグイグイ話を推進する力に魅せられた


採点 ★★★☆☆☆

 昔見たときド派手な演出にビックリしたが、悪い印象はなかった。その後、ラズベリー賞受賞でワースト作品と散々叩かれ、『ホンマかいな』との思いを持っていた。

 今回、観直してみて、ショービズの舞台裏を興味深く描きながら、話をグイグイ推進する力は健在で、古さを感じさせないと認識した。
イブの総てブラックスワンを観たときに感じた舞台裏を覗く感興がここにある。一方、『コーラスライン』も観直してみたが、こちらは古臭く凡庸であった。

 悪評は、映像が裸ばかりのオンパレードで、ラスベガスの虚飾に満ちた世界を下種にドギツク描き過ぎたせいか、アメリカ人の建前上のピューリタン精神、清く正しく美しく、を逆撫でしたためではないかと勘ぐってしまった。
それにしてもアメリカ人の心の地雷を踏んだのか 彼らの非寛容性が際立った様に思った。


 若い女性ノエミ(エリザベス・バークレー)がヒッチハイクでラスベガスを目指す所から映画は始まる。運転手に全財産のトランクを盗まれ、絶望しているところを舞台衣装係のモーリーに助けられ同居するようになる。
下流のストリップクラブ「チーター」でダンサーとして働くようになったノエミは、トップダンサーのクリスタル(ジーナ・ガーション)に見込まれ、一流ホテル スターダストの評判の豪華なショー「女神」のダンス・オーディションを受ける。
 合格したノエミは、クリスタルが主演をするショーの下役ダンサーとして働き始め、やがてクリスタルを蹴落としトップを目指すようになるが‥。

 見どころは、火山が噴火し、女神が現れる豪華絢爛なショーとダンスで、バイクが出てきたりと華やかで迫力がある。トップレスダンサーは、卑猥さは無く意外と爽やかである。
舞台の床にスパンコールを撒いて嫌いなダンサーを転ばしたり、階段から突き落としたりと、ダンサー同士の足の引っ張り合いや売春強要などダーティな面もプンプンだが、主人公が力一杯のダンスで裸一貫から成り上がって行こうとする姿は、逞しくて良いんじゃないかと思えた。

 残念だったのは、とんとん拍子にトップに立つ話が安易だったことと女王クリスタルの主人公への思いが解り辛かったことである。 


 オランダ出身のポール・バーホーベン監督は、『スターシップ・トルーパーズ』(1997)でも感じたのだが、アメリカ文化を小馬鹿にしたような露悪的な表現があり興味がある監督である。
最近の作『ポール・バーホーベン/トリック』(2012)は、話の展開が虚実入り乱れて面白い映画ですよ。

 それにしても、ラスベガスに行ってもこんなショウは無さそうですね。


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愚か者の船

単調さが気になったが、シニカルな味わいの群像劇


採点 ★★★☆☆

 中学二年の秋に予告編を観て永らく観たいと願っていた作品でDVDを購入して鑑賞。大女優ヴィヴィアン・リーが出た最後の作品でとても興味深かった。

 1933年、メキシコのベラクルスからドイツのブレーマーハーフェンに向かうドイツ客船に乗り合わせた人々の28日間の船旅の人間模様を描いている。グランドホテル形式の群像劇だが、10人以上の登場人物の描写が陰影濃く描かれ印象に残る。

 冒頭、狂言回しの役で葉巻を愛好する背広を着た小人の紳士グロッケン(マイケル・ダン)がこの船を愚か者の船と名付ける。初めは異形の人ということで目を引いたが、知的な会話で徐々に普通の人に見えてきたのは不思議な感じがした。この人はアメリカで有名な役者さんだそうだ。

 客船ベラ号の船長ティールは、船医ウィリー・シューマン(マイケル・ウィナー)が重い心臓病で、この旅を最後に船を去ることを寂しく思う。
導入部の昼食会で登場人物の多くを、流れるように見せていく演出と撮影は素晴らしい。
主要な登場人物は以下の通り。
①リーバー(ホセ・フェラー): 出版社オーナーでナチス信奉者で反ユダヤ主義を公言。大声でしゃべり、歌う怪演で憎めない感じもする。
②フッテン夫妻: 物静かな大学教授。ブルドックの愛犬を連れている。
③フライターク氏: メキシコの子会社から帰国中。
④シュミット婦人: 穏やかな老婦人
⑤メアリー・トレッドウェル(ヴィヴィアン・リー): 46歳、外交官の夫と離婚。辛辣な発言をするが、満たされない気持ちを抱いている。
⑥ビル・テニー(リー・マーヴィン): メキシコで解雇された野球選手。外角のカーブが打てなかった事を気に病んでいる。船内の女を物色する粗野な男。
⑦ローウェンタール氏: ユダヤ人の温厚な宝石商。
⑧グラフ氏と甥のヨハン: 神の慈悲を説く狂信的な元哲学教師、車いすを甥に押してもらっている。
⑨ジェニー(エリザベス・アシュレー)とデヴィッド(ジョージ・シーガル): 愛情に不安を持ちギクシャクしている画家のカップル。

 途中、キューバでサトウキビ畑の季節労働者600人と政治犯で逮捕、輸送される伯爵夫人(シモーヌ・シニョレ)を乗せる。
この船は、豪華客船ではなく一等、二等と別れた二級客船なのである。
不眠で苦しむ伯爵夫人と船医シューマンが、お互いに同情し心惹かれていく悲恋が物語の一つの柱となっている。

物語は淡々と進むが、労働者の暴動、ペペ一座のフラメンコ・ダンスショーと変化を持たせ、後半大きな人間ドラマが生まれ、目的港に到着する。

 二つの恋愛模様には心を惹かれなかったが、この作品で感心したのは以下の点である。
①暗い時代の幕開けを冷徹に描いている。
1933年というのは、ヒットラーが政権を取った年で、リーバ氏は公然と反ユダヤ主義、優生思想を声高に語る。『ドイツの災難はユダヤ人だ』と同じテーブルにユダヤ人が着かない様に差別する。
一方、ユダヤ人のローウェンタール氏は、私は鉄十字勲章も貰ったし、『少しの忍耐と少しの理解で世界は住みやすくなる』、『ドイツにはユダヤ人は100万人も住んでいる。どうにか出来るものではない』、『べートーヴェンやゲーテを生んだ国を軽く見るな』と楽観的に見過ごそうとする。
ユダヤ人の妻を持つ男とばらされたフライターク氏は、テーブルを移され、激高して非難するが他の客は黙認する。

リー・マーヴィンとヴィヴィアン・リーの会話
『アメリカでは15歳までユダヤ人など知らなかった』、『黒人をリンチするのに忙しかったんでしょう』とリー・マーヴィンは皮肉を言われ唖然とする。
メキシコ人、スペイン人、ジプシー等への人種差別もあからさまで、愛犬を救った男が溺れ死んでも同情しない場面が出てくる。

 最後に船がブレーマーハーフェン港に到着し、軍楽隊がマーチを演奏する中、乗客が順次降りてくる。
ローウェンタール氏は、奥さんと二人の娘さんとの再会を喜び、ユダヤ人に理解を示した穏やかなシュミット婦人には、ナチス突撃隊SAの制服を着た息子が明るく出迎える。
その後の悲惨な歴史を知ってる我々には、彼らの運命を思いやると大変ショッキングであった。
歴史にIF は無いが、差別や偏見に対しては、小さなことでも異を唱え続けることが大切だと考えさせられた。


②ヴィヴィアン・リーの演技
 ある夜、酒を飲み孤独を感じた彼女は、一人になって突然チャールストンを踊りだしたり、フラメンコダンサーを模したけばい化粧を始める。そこへ酔ったリー・マーヴィンがダンサーの部屋と騙され闖入する。無理やりキスをし犯そうとする彼に初めは抵抗するが、彼女か受け入れようとしたとき、リー・マーヴィンは『なんだ、あんたか』と人違いに気付き、冷めて言い放つ。
彼女は、侮辱に我を忘れて、『出て行け』とハイヒールの踵で彼の顔を殴り続ける。
この異様な光景は、彼女の鬼気迫る演技で忘れがたい印象を残す。

ヴィヴィアン・リーは、50歳の時に演じたこの作品が遺作となったが、伝記を読むと舞台に執念を燃やした根っからの演劇人であったことがわかる。
可憐で痛々しさを感じさせる大女優であった。

ところで彼女はジャラ声だったのですね。本作を観て気付きました。


 2時間29分の白黒映画でやや長すぎると感じるところもあったが、『この船は愚かで無意味な人生でいっぱいだ』とのシニカルな主題も良く描かれ退屈はしなかった。
また社会派のスタンリー・クレーマー監督らしく、人種差別が生まれてくる世相を切り取っているところにも感心した。
観て損はない作品ですよ。


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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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