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マルクスの末裔


久しぶりに翻訳ミステリー小説を読み堪能したので、感想を書いてみたい。
この本は、10年位前に買ってあったが、数ページ読んだだけで積んであった。やはりミステリ小説は、最初の100頁を読んで判断しないとダメだと思った。最初は退屈だったが、後半になるにつれ、面白さが積み上がって行った。

本格的なミステリである。ロンドン警察の二人が、老姉妹が殺された殺人事件を足を使って丹念に探っていく。ロンドンに住んだというカール・マルクスの足跡、遺産の話が虚実交えて、上手にちりばめてあり、ロンドンの下町の様子と歴史が浮かび上がって来て、深い感興を覚えた。

原題は“Marx Sisters”
ロンドン中心部の下町エルサルム横丁のフラットで老女メレデス・ウィンターボトムがベッドに死んでいるのが発見された。検死では窒息死、誰が害のない老女を殺したのか。
本事件を所轄で女性のキャシー・コーラ部長刑事、スコットランドヤードから派遣された中年の敏腕と言われるブロック主任警部の二人がコンビを組んで捜査する事になる。

殺されたメレデスは、二人の妹、ペグとエレノアと暮らしていた。

調査が進むに連れ、エルサルム横丁の住民の多くは、第二次世界大戦に伴う東~中央ヨーロッパからの難民で、年老いた者が多く、過去を暴かれる事を恐れたナチ協力者もおり、一見仲良く暮らしていたように見えるが、水面下では、険悪ないがみ合いも起こっていた。
またこの地を再開発するプロジェクトが進行しており、横丁の住民の大半は立ち退く事に同意したが、メレデス三姉妹は、立ち退きを頑固に拒否していた。

殺人の動機がある者として、第一に悪意を抱いていた横丁住民、第二に都市開発業者が浮かび上がってくる。

捜査が迷宮入りするかと思われた頃、エレノア殺人事件が起こり、連続殺人として謎が深まっていく。

キャシー刑事が捜査の聞き込みをする中から、ディベロッパー関係の建築家ボブ・ジョーンズと在米の女歴史学者ジュディス・ネイスミスが、古書店でカール・マルクスの手紙を発見していた事実が出てくる。三姉妹が持っているというマルクスの献呈本やら手紙、遺稿の話が出て来て、事件は近代の歴史も巻き込んで展開して行く。第三の容疑者は、遺稿を狙った者の可能性が出てきた。
マルクスの話が出て、ストーリーに歴史の陰影が浮かび上がり俄然面白くなる。

確かにカール・マルクスは、1849年から1883年の亡くなるまでロンドンに亡命し、家族と共に生活していた。30年間大英図書館に朝から夕方まで詰め、三万冊を越える書籍を閲覧し研究等を行っていたのは、有名な話である。
「資本論」の執筆活動を行い、彼の生前第1巻のみが出版された。死後、原稿や本は一つに纏められ、”遺産 (ナツハラス) ”と呼ばれ大切に扱われ、親友エンゲルスの尽力で遺稿、書簡から資本論2,3巻が編纂された。

しかし、小説では、第4巻に当る”最終目標”が遺稿で残されていたとされる。
これは革命が最も進んだ社会でのみ成し遂げられる理想社会に関するもので、ロシア革命のような封建主義から社会主義への急速に発展した社会では、内部の矛盾を経験することがないので役に立たない。十分に発展し近代化を終えた成熟社会において、過去よりも未来において、必要とされる導きの書とされる。
人類の未来に明るい展望を開く、信じられないような壮大な話となってくる。

更に、三姉妹はマルクスの曾孫であることが明かされる。マルクスが家政婦に手をつけ、エンゲルスが引き取った隠れた事実を巧みに生かして、その家系であることが語られる。
マルクスの子孫が生きているという驚愕の発見とマルクスの娘達が辿った過酷な運命が描かれ、歴史の深い側面を覗き見るようで引き込まれる。

殺人事件の犯人は、二転三転して最後はアッと驚く真実が待っている。ここは本を読んでのお楽しみである。

男女の刑事コンビは珍しいが、恋愛感情とかは出てこない。若手のキャシー刑事は、エネルギッシュに関係者に聞き込みを行い、何回も会って、相手の表情を読んで怪しい点を追っていく。
ブロック警部は、重厚で洞察力のある実力派で、キャシー刑事のサポートを良く果たして行く。何故、彼がスコットランドヤードの本部を外されたかとか、経歴や個人生活は、本人の口からは語られず、ほんのり噂で聞こえてくるところは、次回作以降に期待を持たせる。
アクションは最後のところに出てくるが、あくまでもオーソドックスな謎解き本格ミステリーで、歴史の影の部分も描かれ、本当に楽しめた。関心のある皆さんにもお薦めしたい。

著者バリー・メイトランドは、キャシー、ブロックのコンビで、その後3つのミステリー作品“All My Enemies”、“No Trace”、“The Malcontenta”を出版している。
こちらも出来栄えが楽しみである。
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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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