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3度の埋葬

等身大の人々を描くことで大切なことが伝わってくる


採点 ★★★★

 以前評判を聞いて観たいと思っていた作品です。レンタルビデオ屋のコーナーで見つけて借りて観ました。
題名がおどろおどろしいので、ペキンパー監督の『ガルシアの首』のバイオレンス・タッチかなと予測していましたが、派手なガンファイトや猟奇的なテイストも無く、心に沁みる穏やかな話で良い意味で予想を裏切られました。

10年前の作品ですが、トランプ大統領が煽るメキシコ国境問題を静かに語っており、今日的なテーマで感心しました。
トミー・リー・ジョーンズ監督は、「川を挟んだ国境のこちら側と向こう側は、ある面においては何も変わらない。だが違う面もあり、そこから規制が生じている。そういった社会の状況を典型的な語りの手法で伝えたかった」と述べています。
両国の普通な人々の姿を等身大で描いているところが凄いなと思いました。

 現代のテキサス州国境地帯が舞台。国境警備隊に新たに入った若者マイク(バリー・ペッパー)が、不法入国者でカーボーイとして働いているメキシコ人メルキアデス・エストラーダを誤って射殺し、人目が無いのを幸いと荒野に埋める。
 ハンター二人組が野生のジャッカルを撃ち、掘り返した死体を見つけて事件が発覚する。身元が判明し、同僚カーボーイ ピート(トミー・リー・ジョーンズ)は真相を探り、地元警察にマイクの逮捕を訴えるが、警察は動こうとしない。
 ピートは、生前メルキアデスと交わした「俺が死んだら故郷のヒメネスに埋めてほしい」との約束を果たそうとする。
ピートは、射殺犯のマイクを拉致し、埋葬された遺体を掘り起こさせる。そして、マイクと遺体を連れて、馬とラバでメキシコに旅立つ。

 ここまでは、描写が時系列的ではなくパズルのピースように行ったり来たりして、全体像が分かる様に出来ており、巧みな構成です。

 地元警察と国境警備隊に追われながら、断崖絶壁のアラリド峡谷や砂漠越えの過酷な旅を続ける。手錠を嵌められたマイクは、途中何度も逃走を試みるのだが‥。
苦労の末、メキシコの辿り着いた村で、ヒメネスという土地も彼の妻も家族も存在しないと聞かされ、ピートは当惑する。
「ヒメネスは2つの丘の間にある物すごく美しいところだ。空気が澄み切っていて山々を抱ける気がする」とメルキアデスが生前語っていた地を、二人は探し廃屋を整え、マイクの心からの懺悔を受け入れて、メルキアデスの三度目の埋葬を執り行う。
その後、ピートはマイクに馬を与え、「自由に好きなところに行っていい」と伝え、去って行くのでした。

 感心したのは、次の二点です。
①人間成長の物語
 この映画は、初老の主人公ピートの話に見えますが、彼の内面はさほど描かれていません。むしろよく見ると、犯罪を犯した若者マイクの成長の物語になっています。
自分本位で他者を思いやることも気付かない青年、メキシコからの不法潜入者を手加減せずに殴り倒し怪我をさせても平気で、自分の奥さんとも温かな信頼関係を築けない未熟な男が、苦難の旅を通じて、朴訥な主人公が亡くなった友に献身的に尽くす姿や周りの人が示してくれる暖かさに触れ、意識は拉致被害者から加害者として罪を詫びるように変わっていく。
ラストシーンで、「悪かった、許してくれ」と懺悔するマイクに、ピートは全てを許して「息子よ」と囁きます。
立ち去るピートに対して、マイクは「一人で大丈夫か」と初めて他者を思いやる言葉を掛けます。ここにはグッときました。

②存在感のある等身大の人々
 映画には、この3人以外にもピートの愛人のカフェの中年女性、警察署長、旅先
で世話になる盲目の老人と、存在感のクッキリした、充たされず空虚さを抱いている普通の人々が描かれている。
またメキシコ側でも、困った人が居れば手を差し伸べてくれる人々がいる。決して誇張したモンスターがいる世界ではないことを静かに示している。

 トミー・リー・ジョーンズの初監督作品であるが、訴えかけたい事がストレートに伝わってくる良い作品でした。

 皆様にも是非お勧めしたいと思います。


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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

Author:ボクダノビッチ
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