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映画「キッド」(1921年)

キッド

親子の離別と再会に胸を打たれた


チャールス・チャップリンが製作した始めての長編劇映画。長編といっても68分である。今から90年も昔の作品ということで、長らく敬遠していたが、サイレント映画の『アーティスト』を観て、無声映画の軽妙洒脱さも悪くないなと感じたので、NHK BS放送を機に観てみた。

無声映画といえば、『戦艦ポチョムキン』を日本初公開時(1967年)に映画館で大いなる期待をもって観たことがある。映画評論家 岩崎昶氏の岩波新書での激賞に動かされて見た訳だが、画像の古さ、継ぎ接ぎのようなモンタージュ、コマ送りの映像にガッカリした覚えがある。映画史上最高作と名声が高かったが、人間が描かれておらず時代の風雪に逆らえないと感じた次第である。

しかし、『キッド』は違っていた。映像はこちらの想像以上に保存状態が良く、その鮮明さは意外であった。また子役のジャッキー・クーガンが可愛く、チャップリンが親子の仲を引き裂かれ、子供を取り戻そうと必死で追いかけ再会するシーンには、人間らしい時代を超えた真実が込められているようで胸を打たれた。育ての親と実の親という普遍的テーマも見え隠れしている。

ロンドンの下町。男に捨てられ絶望した若き娘エドナは、赤ん坊を抱いて保養院を出て、金持ちのリムジンに赤ん坊を置き去りにする。二人組の泥棒がこの車を盗むが、赤ん坊に気付き裏通りのゴミ箱のそばに置いていってしまう。浮浪者チャーリーが赤ん坊を見つけ、心ならずも育てることになる。
5年後、成長した男の子キッドは、チャーリーの良き相棒となり、窓ガラス割りとガラス修理工のマッチ・ポンプ・コンビとなっていた。
一方、エドナは、リッチなオペラ・スターとなり、男の子を捜そうとする。病気のキッドを診た医者が、書き付けから気付き、キッドを感化院に収容しようと役人を差し向ける。キッドを取り戻そうとチャーリーが屋根上を追いかけ、闘い、再会するところが、この映画の白眉となっている。
後半は、居眠りしたチャーリーが幸せな夢の国で空中を飛び遊ぶファンタジーとなる。警官に起こされたチャーリーがエドナの屋敷に連れて行かれ、キッドと再会しハッピーエンドとなる。          

キッド役のジャッキー・クーガンは5歳。自然な素振りで、主人公のチャップリンより目立つ存在感である。この映画の成功は彼の出演による。
チャップリンは、クーガン親子を舞台で見て、ジャッキーの出演を熱望し、契約書にサインしてもらうまでハラハラしたそうである。
チャップリンは、赤ん坊と動物ほど観客を笑わせる名優はいないと語っている通り、子役物も当ると予測していたようであるが、ジャッキーの天才的な演技を引き出した演出は大したものだと思う。10ヶ月の赤ちゃんの様子を捉えたシーンも優れていると思う。
ここら辺りは、チャップリンの慧眼と欧米の契約最優先の考え方に、妙に感心させられた。

映画の最初に「笑いと涙の喜劇」と出てくる。そのような作劇は当時は無く、チャップリンが作家ガヴァナー・モリスに相談した時、どっちつかずになると大反対にあったそうだ。チャップリンは、形式は人間が作り出すものだと押し通し、その後、この手のドラマは一般的になった。彼の先見の明の勝利である。

映画は、やや詰め込みすぎで、後半はダレる感じもするが、前半の展開は中々良い。
赤ちゃんを連れ帰って、古袋の生地のハンモック、乳首を差したティーポット、籐椅子を切り抜いたオマルで育てる所などは、思わずニンマリさせられた。
パンケーキを作り食事をするシーンや定石の強者と弱者の追いかけっこも軽快で楽しい。

チャップリンは、この製作に2年の月日と50万ドルを掛けている。映画『チャーリー』(1992)に描かれている通り、最初の妻ミルトレッドとの離婚調停中で、差押さえを恐れ、未編集のフィルム(500本分)を持ってソルトレーク・シティに逃亡し、ホテルで2000カット以上からの編集作業を行った。
『キッド』は、試写で大成功を収め、150万ドルの配給契約/5年間を得た。

この映画を観て、言葉は無くとも動きのある映像があれば、人を強く惹きつけるものだと感じた。
また、これまであまり気付かなかったが、チャップリンのアイディアをゼロから生み出し、映像に仕上げていく優れた才能にも感心した。
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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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