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映画「細雪」(昭和58年)

細雪

四季の移ろいの中、柔らかな大阪弁が心地よく響く

30年ぶりにスクリーンで再見する事が出来た。公開当時、音楽評論家の吉田秀和氏が「この映画はバロックだ」と賞賛されていて、当時は意味がピンと来なかったが、今回観てみると、陰影の中でのシーンが意外と多く、それと対比するように明るく鮮やかな雨上がりの満開の桜や秋の紅葉さらには華やかな着物の数々と豪華絢爛、壮麗なシーンがあり、谷崎潤一郎の陰影礼賛の世界が巧に描かれているなと感心した。

それから、戦前の大阪船場の上流家庭を描いて、文豪谷崎が意図した変わり行く時代に、無くなって行くものへの愛惜の念に溢れていた点も良く解かった。
これらは、年を取ってこそ気付く事も有るものだと強く感じた。

東宝創立50周年記念大作で円熟の市川昆が監督をした。40代の岸恵子(東宝)、佐久間良子(東映)、30代の吉永小百合(日活)、20代の小手川祐子と旬の美人女優が会社の系列を離れて出演している。五社協定はもう消滅していた頃である。
市川昆監督は、本作では主演女優の顔のクローズアップを多用し、女優さんは感情の起伏を顔の表情で表わさねばならなかった事や大阪弁の柔らかな言い回しが、大変だったろうナと思いやられた。

◆◇ 桜に始まり雪に終る ◇◆
昭和13年春から冬にかけて、四季仕立ての1年間の物語に構成してある。
大正半ばには、船場の船問屋で3本の指に数えられた蒔岡家の跡取り四姉妹の物語である。大阪商人の姉妹の呼び方が独特なので、登場人物と併せて紹介しておく。

長女:鶴子(岸恵子)     いとはん
次女:幸子(佐久間良子) なかんちゃん
三女:雪子(吉永小百合) きあんちゃん
四女:妙子(小手川祐子) こいさん
尚、男の子は、ぼんでぼんちゃんと呼ばれる。

長女鶴子は大阪上本町の旧家に住み、両親亡き後、妹達の親代わりと蒔岡本家の格式と役割を担ってると自負している。亭主辰雄(伊丹十三)は婿養子で銀行員である。
次女幸子は神戸芦屋の瀟洒な邸宅に住み、分家となっている。亭主貞之助(石坂浩二)も婿養子で百貨店の呉服販売のサラリーマンである。
こちらの分家に、訳あって三女雪子と四女妙子が身を寄せている。
雪子の数回にわたるお見合いと奔放な妙子の恋愛沙汰に本家と分家が気をもみ、物語は展開していく。
雪子は、内向的な大人しい娘で幸子の幼い娘の世話を熱心にしているが、年も行っているからか変な見合い話が増え縁談は悉くまとまらず、姉達をヤキモキさせる。
話の進行につれ過去の出来事が描かれる。
5年前、妙子の駆け落ち事件で新聞に雪子の名前が間違えて載り、辰雄が抗議に行ったとき、雪子が断固反対したことからも、本当は芯の強い女であった。見合いは全て何かと理由を付け断ってきたが、最後は華族の末裔との結婚にいたり、幸子をして「あの人よう粘りはったなァ」としたたかな面も明らかとなる。
吉永小百合は、これまで直情径行的な善い人の役ばかりであったが、このひねった役柄で一皮向けた役者となったと評された。

妙子は、船場の奥畑のぼん、写真屋の板倉、バーテンの三好と充たされぬもの求めて恋愛を繰り返す。最後は、バーテンと一緒になり、家を飛び出す。家に縛られず独立心旺盛で自由を求める姿は、本当は妙子が一番幸せなのではないかと思った。

良く見れば、蒔岡の家も辰雄が先代の負債を整理し資産は残り少なく、婿殿のサラリーで生計を立ているのが実態である。辰雄に東京栄転の内示があり、鶴子は「本家はどうするんだ」、「京都より東には行ったことが無い」と反対するけれども、結局は、東京に行くと決意し、大阪駅での見送りになる。

◆◇ 華麗な女優の中で光る二人の婿養子 ◇◆
俳優では、伊丹十三と石坂浩二の男二人が、とても良い味を出している。こんなに上手い役者だったんだと再認識しました。
伊丹十三は、家や格式よりも実利を考える人で、奥さんを立てて下手に出るものの翻弄され、かなわんなという表情がユーモラスに見え隠れします。
石坂浩二は奥さんに充たされないのか雪子に思いを寄せ、パーマ屋のマダムとも愚痴を交わす妖しい関係を上手に演じています。養子同士の連帯感からか何かと伊丹十三の立場を支持してあげます。

女優では、何と言っても佐久間良子が好演です。
二人の妹を片付かせたいと気を配り、本家の姉にズケズケと意見したり和解したり、亭主の浮気の気配に気をもんだりと大忙しですが、うまく画面に溶け込んで上手なものです。
岸恵子の方は、バタ臭い華やか過ぎるイメージがあって、上手だけれど違和感が残りました。


大阪駅で見送った後、石坂浩二は独り酒を飲み細雪が舞い散ります。細雪とは、大きなぼたん雪と違って細かな雪を指すそうです。
花見の回想シーンがかぶり、観客は、妙子が家を出、雪子が嫁ぐことになり、辰雄、鶴子の本家も東京へ移り、これまで大騒ぎしていた蒔岡家が無くなってしまう貞之助の寂しさに思い至るのです。

映画は、監督がこれまで培ってきたモダニズム表現を通して、日本の伝統的なものが美しくカラッと描かれていると思いました。妙子が雪子の足の爪を切るシーンや妙子の入浴シーン等もエロテックというより名画のような純粋さで浮かび上がっています。

市川昆監督が画面の構図や色合いに拘って作り上げた魅力溢れる作品なので、皆さんに一見をお勧めします。

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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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