FC2ブログ

映画「スノーピアサー」(2014)

スノーピアサー

人間の愚かさ、猥雑さに溢れた重量級SF活劇


近未来SF大作で大変刺激的で感心した。
題名の“Snowpiercer”とは、氷雪を突き刺して猛然と進む列車の事である。辞書には無いので造語のようだ。韓国題名は「雪国列車」とマイルドで迫力に欠ける。

冒頭、ナレーションで「2014年7月1日、急速な地球温暖化に悩む先進79ヶ国は、環境保護団体の反対を押し切って、冷却薬剤CW-7の上空散布を行った。しかし、想定に反して地球は新たな氷河期に突入し、全ての生物は死に絶えた。」と語られる。

17年後の2031年、唯一生き残ったのはスノーピアサー号の住民達である。この列車は、永久機関のエンジンを有し、氷雪を蹴散らし走り続ける巨大な弾丸列車である。1年かけて地球を1周する未来版“ノアの箱舟”といったところか。
車内では、金持ちエリートは前の車両に住み、貧しき者は最後部の車両と階級化が進んでいるが、地球と同じような社会が維持されていた。企業家で列車創造主のウィルフォード氏は、最先車両のエンジン部に住み、人々の前に姿を現さない。
劣悪な生活環境に苦しむ後方車両の人々は、先頭のエンジン部に入って車両をコントロールしようと、カーティスをリーダーに暴動を起こす。
一方、総理、兵士たちは彼らの殺戮を始めようとする。
ということで、『ギャング・オブ・ニューヨーク』に似た血腥い闘い、銃を避け手斧で殴り合うアクションが延々と繰り広げられる。

反乱を起こしたカーティスが終盤、次のように語る。列車に乗り込んだ1ヶ月間の極限の飢餓の様子と自分が行った野獣の振舞い、賢者ギリアムが示したキリストのような自己犠牲、それから感じた深い反省と後悔を…。彼は最後に贖罪を果たそうとする。
しかし更に驚くのは、カーティスが先頭車両に到達し、ウィルフォード氏と会った時、創造主が明かした壮大なプロットである。これは観てのお楽しみ。


じっと見ていると、列車の世界は地球そのものの限られた世界であるということが伝わって来る。従って、醜い悪の部分も拡大されている世界だ。
文明で栄えた人類は、文明に裏切られて滅んでしまう寓話のようだが、それでも人間は前に進んで行かざるを得ないと語りかけている。
最後に列車は爆発、転覆し、乗客は死んでしまう。しかし二人の子供が生き残って、初めて雪の大地を踏みしめる。遠くに見える白熊は、氷河期も変わり、人類は生き続けるのではないかとの期待を残して終る。

この映画は、おかしな突っ込みどころが満載なのだが、それを捻じ伏せてしまうボン・ジュノ監督の力技には感心した。今後も期待したい。
それからマルコ・ベルトラミの映画音楽も中々良かった事を申し添えておきたい。

映画で印象的だったのは以下の点である。
◆◇映像の斬新さと鮮やかさ◇◆
薄暗い中で黒っぽい人間達、白人も黒人も有色人とも判らず眼だけ光っている、がうごめいている。彼らが食べるのは、プロテインと呼ばれる黒っぽい蒟蒻のような板状のもので如何にもマズそう。
彼らを支配、点呼する兵士たち と暗い映像を延々とやられるのは堪らないなあと思っていると、反乱勢の闘いが起こり、前の車両へ進んで窓のある車両へ到達する。最後尾車両には窓もないのか!トンネルを抜けた時、明るく差し込む光の中で、皆が凍りついた地上の様子を窓から初めて見るシーンは、驚きと共に明暗の対比が鮮やかで印象的である。
ここは、『渚にて』という映画で、潜水艦乗員が原水爆で死滅した都市を、人が居ないかと儚い期待で眺める光景に似ているナァ。冷え冷えしたところも。

前方に進んで行くに連れ、列車内にエリート達の植物園、水族館、寿司カウンター、小学生教室、美容院、プール、ダンス・クラブが次々と現れ、色彩を取り戻していくところもビビッドで斬新である。

舞台は殆ど列車の中で正面から撮った映像となるが、構成が巧みで縦長車両の狭苦しさを感じさせない。これは良く考えられ工夫されていると思った。
殺戮シーンも、単なるスプラッターにならぬよう最後までは見せない監督のこだわりがある。

◆◇登場人物の多彩さ◇◆
多くの人種が登場し、まさにノアの箱舟的様相である。日本人も出てくるヨ。この混沌とした人種坩堝の様相は、監督の強い拘りのようだ。
反乱を主導する主人公カーティス役は、クリス・エヴァンス。『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベルが補佐役を務めている。
この二人は逞しいのだが、ストレート過ぎて、次の3人に喰われ損している。

メイソン総理役のテイルダ・スウィントン。厚い眼鏡を掛け、ブリッジした歯でヨークシャー訛りの英語で最下層の人々にウィルフォード氏への忠誠を語りかける。偏執的で冷酷だが、靴を投げつけられ頭に載せられるなど戯画的な役で怪演である。入れ歯を外すシーンなどクールな美女がそこまでやるかと驚いてしまう。

韓国人ナムグン・ミンス役のソン・ガンホ。車両ドアのセキュリティを設計したプロ、薬物中毒で監獄車両で冬眠させられているところをカーティスに出される。ヌーボーとした表情で韓国語しか喋らない(英会話は通訳機で)が、少しずつ味が出て来て印象的だ。起きしなマルボーロの煙草を吸い、人々に忘れられた味を思い出させる。人は長年食していないと食べ物の味も忘れてしまうようだ。
透視力を持つ彼の娘コ・アソンも救出される。大きな眼に力があり、忘れられない表情をしている。

賢者ギリアム役のジョン・ハート。最後尾列車の貧しき者の思想的リーダーでカーティスに適切なアドバイスを与える謎の人物。深い皺と表情で素晴らしい重厚な演技を見せる。


列車が主役の映画を久しぶりに観たのは、爽快であった。思い出に強く残っているのは、バート・ランカスターの『大列車作戦』(1964)、F・シナトラの『脱走特急』(1965)で緊迫感や列車の疾走感が良かった。
SFと列車が好きな方は必見ですよ。



line

comment

Secret

line
line

line
カレンダー
08 | 2018/09 | 10
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
line
プロフィール
映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

Author:ボクダノビッチ
FC2ブログへようこそ!

line
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

line
最新記事
line
来訪者数
line
最新コメント
line
月別アーカイブ
line
カテゴリ
line
sub_line
検索フォーム
line
RSSリンクの表示
line
リンク
line
メールはこちらから
ご意見・ご感想をお待ちしております。

名前:
メール:
件名:
本文:

line
QRコード
QR
line
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

line
sub_line