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映画「追憶」(1974)

追憶

時の移ろいを感じさせるほろ苦いラブ・ストーリー


ブログ更新をしばらく休んでしまった。公私とも忙しかったこともあるが、1月末からの小保方事件が何とも嫌な感じで、筆を取るのが億劫になってしまった。
事件後、生化学出身の女子が会社で「取り違えなんて有り得ない」と呟くのを聞くと、後輩が抱いたであろう些かのやっかみも感じたが、本件は生物学実験のデータのバラツキを悪用した不正だとの思いが強い。加えて、ネットで正義を振りかざす力が強大なのにも驚いた。事件は、終幕に向かっており、科学らしく白日の下に明らかになることを望む。


さて映画「追憶」である。若い頃から何回か観たことがある。
原題は“The Way We Were”で、「あの頃の私たち」という意味だそうだ。wayは、ここでは道でなく、ありかたを指す。
マービン・ハムリッシュ作曲、バーバラ・ストライザンドが歌う甘い主題歌は大ヒットした。ニューオリンズのピアノバーでこの曲をリクエストした時、何人ものアメリカ人が“Evergreen !”(いつまでも青春だ)と声を掛けてもらった事を思い出す。アメリカ人にとっても青春のノスタルジックな思いが詰まった作品だと思う。
Memories light the corners of my mind (想い出が私の心の片隅に灯をともす)と始まるバーバラの伸びやかな歌声は、とても素敵だ。

懐かしさを感じさせる学生生活や燃えるような恋愛とアメリカの神話を描いた前半に対し、後半は政治に翻弄される個人の過酷な現実が描かれ、木に竹を接いだような構成に、昔観た時は違和感があったが、今観ると、こちらのアメリカの歴史に対する理解も深まったせいか、二人が生きたひたむきさに共感するところが多かった。

映画は、第二次大戦中 NYのラジオ放送局で仕事をしているケイティ(バーバラ・ストライザンド)が上司と出かけたナイトクラブ エルモロッコで偶然 旧友の海軍大尉ハベル・ガードナー(ロバート・レッドフォード)と再会するところから始まる。
アイビー・リーグ学生時代の回想へと移る導入部は、柔らかで過去への優しい憧憬を醸し出し秀逸である。

1937年、ニューヨークの大学に通うケイティとハベル。二人は文学部創作教室のクラスメイトである。ケイティは共産主義を信奉する草の根活動家、平和ストライキを訴える学生集会でスペインのフランコ独裁政権を非難しソビエト支援を支持する。何事にも一生懸命でカフェ・レストランや印刷所でアルバイトをしているユダヤ系苦学生である。
一方、ハベルは、ノンシャランなスポーツに精を出す金持ちのゴールデン・ボーイで、短編創作「並のアメリカ人の微笑」に書くように自分は、この国と同じようにイージーに流れていると認めている。しかし彼の文才は、努力家のケイティより優れて、教室の秀作に選ばれる。彼の第一作「アイスクリームの国」は出版社に売れた。
ケイティは、彼に反撥しながらも惹かれるものがあり、彼との卒業式のダンスは淡い思い出であった。

ハベルと再会したケイティは、積極的に彼をアパートに誘い、次の来訪を契機に結ばれる。ここでのケイティの献身ぶりとドタバタは微笑ましい。除隊したハベルとケイティは結婚する。ケイティは政治活動への意識を持ち続け、ハベルは小説家、脚本家として頭角を現していく。

しかしケイティは、ハベルの友人、親友JJとキャロル・アンの仲間達の世界に馴染めない。ルーズベルトが亡くなった日、彼ら共和党支持者がエレノア大統領夫人を「炭鉱訪問時、顔が真っ黒で歯だけ白かった」とからかうジョークに、「足の悪い夫に代って出かけている夫人に何を言うの」とケイティは怒りを爆発させる。

二人は40年代後半にハリウッドに移った。
ケイティは妊娠し穏やかな日々が続くかと思われたが、ハリウッドに赤狩りの嵐が吹き荒れ、二人は政治の奔流に巻き込まれて、主義主張の違いから離婚に到る。
50年代、二人が偶然ニューヨークで再会し、懐かしむところで終わる。

好きだったのは、親友JJとハベルが“best ever game”の言葉遊びするところである。「生涯でのベスト ホテルは ?」、「 ベスト シーズンは ?」、「 ベスト イヤーは ?」等々とJJが聞き、ハベルが答えるシーンが何ヵ所出てきて、自分だったらどう答えるかなと思いながら観ていた。このように何でも話せる友は、本当に良いものだ。

映画で印象的だったのは以下の点である。

◆◇男女逆転の構図◇◆
何といっても魅力的なのは、ケイティを演じたバーバラ・ストライザンドである。ハリウッド美人ではないけれども、何事も積極的に取組み、自分の考えをストレートに主張していく姿は、小気味よく大変惹かれるものがある。思ったことを直ぐ口にするマシンガン・トークも微笑ましい。
ヒッチコック映画に良く出てくる事件を共に解決しようとする勝気な女性に通じるものがあり、ハリウッド映画の典型的な女性像の一つである。
ロバート・レッドフォードは、大変美男子だが常識人過ぎて魅力に乏しい損な役で、女性の引立て役となっている。
ハベルがケイティのどこに惹かれたかは良く描かれていなかったので、描かれていれば、切実感が増しただろうと思う。

◆◇赤狩りの時代◇◆
東西冷戦の緊張の高まりの中でマッカーシズムが吹き荒れた時代である。ハリウッドは共産主義者の資金源と非難され、1947年にはハリウッド・テンと呼ばれる映画人10人が議会侮辱罪で告発され懲役刑を下された。アメリカの共産主義勢力だけでなく、ハリウッド急進派や進歩主義者も非米活動委員会に召喚され仲間を密告することを強要された。
映画業界も調査への協力を拒んだ者は、ブラックリストに載せられ、彼らを雇おうとする映画スタジオは無く、多くの俳優、映画スタッフが職を失った。
監督エドワード・ドミトリック、ダルトン・トランボ、俳優のキム・ハンター等である。

映画監督エリア・カザンは30年代に一時共産党にいたことがあり、下院非米活動委員会で当時の仲間の名前を言うように要求された。『エリア・カザン自伝(上、下)』を読むと、『革命児サパタ』の公開を控えた時期で、召喚された二回目の委員会で仲間を密告した。一回目は拒絶したものの、揺れ動く心で委員会に協力した。この間、彼は名前を明かす友人3人に了解を取り付けたりもしている。

カザンはギリシャ系トルコ人の移民の子であり、自分の不安定な状況を絶えず認識しており、アメリカへの新参者と見られることに対して、愛国心を過度に誇示することで国民としての忠誠心を示そうとしたのであろう。
このことで自分を守ろうとしたが、仲間を売ったユダのように見下され、その後の生涯に暗い十字架を背負う事になる。この本では、仮面をかぶって生きなければならなかった彼の憤りや複雑な心の内が見え隠れしている。

赤狩りに対して、ケイティはワシントンでの抗議活動に積極的に参加し打倒を訴え、ハベルはハリウッドでの立場を守ろうと穏健にやり過ごそうとし、二人の亀裂は避け難いものとなっていく。ハベルも脚本をズタズタに改ざんされ傷を負っていく。
ハベル「主義より人間が大切だ」、ケイティ「人間が主義そのものなのよ」


ケイティの生き方は、その後もNYで原爆禁止の署名活動をするなど首尾一貫して爽やかさを感じさせるが、負の部分が描かれていないのでやや深みに欠ける。

ラストで過ぎ去った時を感じさせるところは、身につまされ、いつまでも胸に残る名場面だと思う。またこれがあるからこそ過去の諍いを乗り越え、穏やかな後味が残ることになった。
脚本アーサー・ローレンツ、監督シドニー・ポラックの佳作である。





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