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映画「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989)

ニューシネマパラダイス

人懐っこいシシリアで、映画への夢が美しく描かれる



利用しているケーブルTV会社が、お客様感謝として映画上映会を開いたので本作を劇場で観ることが出来た。20年以上前にTVで観たきりだったので、所々忘れており新鮮な気持ちで映画を愉しむ事が出来た。
尚、観たのは123分の劇場公開版で、173分のディレクターズカット版ではない。

シシリア島の小さな村にあった唯一の映画館が舞台。ヨーロッパの集落だから中心に広場と教会がある。教会は、時に映画館として使われ、神父さまが接吻など風紀上問題となるシーンを予めチェック・カットし、映画が上映される。
第二次世界大戦後から現在にわたり、上映映画を取り巻く人々の楽しみや熱狂が子細に語られ、かつて映画館が栄えたことをしみじみと描いている。

映写技師アルフレードと映画に魅せられたサルヴァトーレ少年(トトと呼ばれる)との心の交流が暖かく描かれ、青年となるまでがノスタルジックに回想される。
父親不在の家庭で気丈に振舞っていた母親が、ニュース映画を観たトトからロシア戦線で父親が亡くなった事を知らされ、落ち込む様子など戦後の暗い面も描いている。アルフレードはトトにとって父親代わりの存在だったことが良くわかる。

映画は、母親からアルフレードの死を告げられた中年サルヴァトーレが、故郷に戻り過去を振り返る構成をとる。
題名のニュー・シネマ・パラダイスとは、映画館の名称である。


映画を観て印象的だったのは、次の点である。

◆◇観客の豊かな表情に圧倒された◇◆
映画愛が溢れるように描かれ、映画好きには心地良い時間だった。
映画製作や女優業を製作者側から描いた作品は多く、『アメリカの夜』、『蒲田行進曲』、『映画女優』、『ヒューゴの不思議な発明』等々と次々に思い浮かぶが、映画館や観客を正面に据えた作品は珍しいと思った。
多くの地元の人々を使った映画館での様子は、ユーモラスかつリアルで、喜びや悲しみ、怒り、嘆きなど共感する感情が溢れている。
昔、映画評論家の飯島正氏が『自転車泥棒』を例にイタリア人だけは素人でも俳優そこのけの存在感があると語ったのを思い出した。

劇中で上映される映画は、『どん底』、『美女と野獣』、『風と共に去りぬ』、『チャップリンの拳闘』、『夏の嵐』、『ユリシーズ』、ターザン等々と40作品以上で知っている作品も多く懐かしかった。
感心したのはジョン・フォード監督の『駅馬車』とビスコンティ監督の『揺れる大地』で、前者は、インデアンに追いかけられる馬車の疾走シーンが大スクリーンで観ると迫力満点で名作の評価が良く解り、後者は同じシシリア海村を舞台としたドキュメンタリー風のせいか、観客の資本家への怒り、貧しき人々への同情や涙等の感情移入が良く伝わってきた。

◆◇映写のテクニカルな面を描く◇◆
見られなくなった映写機や映写技術のテクニカルな面をさりげなく描いて良かった。
私は1970年代初期の大学生の時、映研に入っており、学園祭などで35mm映画の上映会を大講堂で行っていた。携わった経験から、映写機器や技術に馴染みがあり、本作品は、これらを上手に描いていると感じた。

35mm映写機は、遠くを照らすため強い光源が要る。1980年頃までは、カーボンアーク式映写機が使われていた。これはプラスとマイナスの炭素棒(カーボン)を近接させて燃焼させ光源とする方法を採っている。強く明るい光を発し、柔らかな印象を与える。
映画フィルムは一巻15~20分位で1時間半の映画で約6巻からなる。これを切れ目なく映していくところに簡単なテクがいる。巻の終わり頃に、画面右上に白い丸や黒い丸のマークが出るのを合図に次の巻を回して切り替えていくと切れ目なく映画が楽しめる次第である。今でも古い映画を観るとこのマークを目にする事があり懐かしい。

映画の中で、配給会社が二本立てのフィルムを館に回さないことに、館主が怒って対抗し、上映を終えると一巻毎、自転車で別の映画館へ運び二館で上映するシーンがある。映画フィルムの構成を知っていると有り得ると思う。

映画フィルムは、昔はニトロセルロースの基材フィルムに感光乳剤を塗ったものを使用していたため、引火の危険が高かった。トト少年がフィルムの切れ端を集め家で火が付いたり、映画館での大火災が描かれていたが、上映フィルムの巻きが止まったりすると火が付きやすい。50年代以降は、基材がポリエステルフィルムに代わり安全性は向上した。

映画は、少年トト(サルヴァトーレ・カシオ 当時8歳)とアルフレード役のフィリップ・ノワレがとても良い味を出している。
少年時代を描いたところは、生き生きして瑞々しく優れていただけに、青年時代の恋愛物語は男女二人の魅力が乏しいせいか類型的で精彩を欠いていたのは残念である。
尚、中年のサルヴァトーレ役は『家族日誌』のジャック・ペランであることに驚いた。


本作品を観ると、ジョゼッペ・トルナトーレ監督がシシリアの郷土や人々をどんなに愛しているかが良く解るし、彼の個人的体験から映画に対する愛情が溢れていたので、再見しても感銘深かった。


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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

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