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映画「シェルブールの雨傘」(1964)

シェルブール

穏やかな詩的な雰囲気が絶えず流れている

30年振り位に映画館で再観した。福岡市TOHOシネマズ天神。デジタル・リマスター版で、当時はこんなものだったかと映像は時折粗さも認められたが、歌は中音域が鮮明で昔の感動が蘇ってゴキゲンになった。
デジタル版は監督のジャック・ドゥミィが亡くなった後、奥さんのアニエス・ヴァルダ(この人も映画監督)が1992年に修復し、その後2009、2013年と完全版が作成された。

フランス北西部の港町シェルブールで傘屋を営むエムリー夫人の一人娘、16歳のジュヌヴィエーブと20歳の自動車修理工ギィの夢見るような恋、ギィは兵役召集されアルジェリア戦争へ派遣、二年後の帰還、別な道を歩む二人の雪夜の再会…
1957年11月から1963年12月クリスマス直前まで6年間の移り変わりが、三部構成で描かれる。
  出発 1957年11月
  不在 1958年 1月
  帰郷 1959年 3月

オープニングはシェルブールの港町を示した後、雨が降りだした石畳の広場に赤、青、黄色の傘やレインコートが行き交う様子を真上から映す。ここにクラリネットとビブラフォンによるテーマ曲が静かに重なって始まる大変洒落たものである。

セリフが全て歌で現わされる斬新なミュージカルで、踊りが無いのも変わっている。
製作は、シナリオ、撮影台本、音楽の順に作られ、録音された音楽を流しながら撮影していくという手法が採られた。
俳優と歌手は別々のダブル・キャストになっており、歌はプロの歌手が歌い、俳優は自ら歌っているように表情をつけ演技して、違和感はない。

映画は、カメラワークの流麗さと場面転換の鮮やかさで物語が次々に展開していく。第一部は、このスピード感が心地良く、夜のデートからアレヨアレヨという内に駅での二人の別れに至る。私としては、この第一部が、弛緩したところが無く、最も優れていると思う。
お気に入りは、深夜の波止場を二人が散歩するシーンで、「女の子が生まれたらフランソワと名付けるわ」と言うところ、伸びやかな雰囲気が素敵だ。

当時の知識人や若者に大きな懸案だったアルジェリア戦争を扱い、舞台の年月を経時的に表示する等してリアル感を出そうとしているが、金持ちの紳士になびくジュヌヴィエーブの心変わりの心理等は描かれておらず、リアリズムの映画ではなく斬新な現代オペラとして繰り返し観て聴いて愉しむのが正解だと思う。
その意味で、新しいミュージカルを創ろうとする監督ジャック・ドゥミィ、音楽ミシェル・ルグランの表現意欲を強く感じ、これは大成功していると思う。

ルグランの音楽は、モダン・ジャズ、シャンソン、アルゼンチン・タンゴ、マンボ、壮大なオーケストラをバックに歌い上げる主題歌等と次々に展開される曲は、才気煥発で今聞いても新鮮である。
フランス語の響きを生かした歌は、歌詞だけを読むと初級フランス語のようで単純極まりないが、メロディが付くと詩心溢れるビビットな響きに変わり、魅力が溢れだす。


もう一点素晴らしいのは、ベルナール・エヴァンの美術、ジャン・ラビエの撮影である。
傘店の赤の部屋、空色の寝室、黄色と赤のパラソル、青の波止場等々、色彩が鮮やかで、原色を強く打ち出している。
私は、1980年代後半にシェルブールを訪問したことがある。先端の原子力再処理施設を技術見学に訪れたのだが、当地は期待に反して華やかさのない軍港特有の灰色の街であった。
映画に見られる色彩の鮮やかさは、ドミー監督らの創作であったことを当時強く感じたものである。
尚、撮影監督のジャン・ラビエは、ドゥミィ監督のみならず、『大人は判ってくれない』他のヌーヴェル・ヴァーグの名作を多く撮っている人である。

出演者のキャストは以下の通り。
ジュヌヴィエーブ カトリーヌ・ドヌーブ  (歌)ダニエル・リカーリ
ギイ       ニーノ・カステルヌオーヴォ (歌)ジョゼ・バルデル
エムリー夫人 アンヌ・ヴェルヌン (歌)クリスチャンヌ・ルグラン
カサール氏   マルク・ミシュラン (歌)ジョルジュ・ブラネス

ダニエル・リカーリは、70年代に『二人の天使』で大ヒットしたフレンチ・ポップス歌手、伸びやかな歌声が人気を博した。
ジュヌヴィエーブの歌声は、可憐さと大きな声量での安定感が美しい。
クリスチャンヌ・ルグランは、ミシェル・ルグランの姉で8人組スウィングル・シンガーズのリード・ボーカルとして活躍した。今回観ると張りのある声が大変存在感があると感じた。


ジャック・ドゥミィ監督は4年後に次作『ロシュフールの恋人たち』を作っている。
期待してリアルタイムで観たが、こちらはジョージ・チャッキリスも出てダンスを爆発させ、弾け散るようなミュージカルだったが、前作ほどは乗れなかったのを憶えている。



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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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