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映画「僕と彼女とオーソン・ウェルズ」(2009)

オーソン・ウェルズ

若き日のオーソン・ウェルズの魅力が溢れている


日本未公開作品。CATVフィルムイマジカで鑑賞。
軽い青春物かなと軽い気持ちで観始めたが、良く出来た作品で感心した。
ハイスクールの若者が、オーソン・ウェルズのマーキュリー劇団に参加し、シェイクスピア作「ジュリアス・シーザー」のブロードウェイ公演立上げに立ち会う1週間の出来事を描いている。

主人公の若者特有の“何になりたいのか解らない不確かさ”や“爽やかさ”、野心と挫折も程良く描けていたが、何と言っても圧倒されたのは溢れる才能と傲慢不遜な自信を撒き散らすオーソン・ウェルズの存在感でした。
彼の若き日々や取り巻く人々を知ることが出来て、映画好きには楽しかった。

私が観たオーソン・ウェルズの映画は、監督作の『市民ケーン』(1941)、『第三の男』(1949)の演技が圧倒的だったが、『白鯨』(1956)の神父(長演説が迫力あった)や『パリは燃えているか』(1966)の和平工作に奔走する重厚なスウェーデン大使も強く印象に残っている。

1937年秋のニューヨーク。18歳のリチャード(ザック・エフロン)は、ハイスクールでシェイクスピアを学んでいる。演劇志望の彼は、通りがかったブロードウェイでオーソン・ウェルズ (クリスチャン・マッケイ)と出会い、彼のマーキュリー劇団が稽古中の『ジュリアス・シーザー』の舞台に、端役(ルシアス役)として選ばれる。上演は1週間後の木曜日である。
ウェルズ演出は、斬新な現代劇風。黒制服の男達がスポットライトに浮かび上がる群像劇である。

リハーサル風景に、色んな実在/架空の人物が登場する。
ジョン・ハウスマン:劇団の共同責任者。オーソンの無理難題に振り回され言い争うが、「船は沈没寸前、波は甲板におそいかかる、しかし救える男が一人いる。想像力と洞察力秀でた男だ」と彼を全幅信頼し、劇団員を鼓舞する。映画プロデューサー、俳優としても有名な人だったそうだ。
ジョゼフ・コットン:劇団からの盟友。彼やヒッチコックの映画に多く出演している名優である。『疑惑の影』、『ナイアガラ』、『ガス燈』などの悪役が印象的だった。ここでは、女好きのプレイ・ボーイに描かれている。それにしてもそっくりさんデスね。
ミュリエル・ブラスラー:架空の女優でオーソンの愛人。妊娠中の奥さんが登場すると劇団員が暗号アンナ・スタフォードと叫んで隠そうとする。

劇団メンバーは、オーソンを「すごい読書家で知識も豊富、彼を批判しないことがここのルール」と認め合っており、オーソンも全てのセリフを憶えて音楽、照明まで演出しており、「ルールを忘れるな。全てが私のものだ。もう一回、リハーサルをやろう!魔法が起こる」と団員を鼓舞し、初日を迎える。
混沌とした中からオーソン・ウェルズの自信過剰ともいえる毅然とした演出により舞台が生まれてくる様子を見るのは、緊張の中にワクワク感があり心地よい。
当時、ラジオ放送の仕事で劇団を財政支援している光景も描かれる。
オーソン役のクリスチャン・マッケイは顔つきもソックリだが、演技も大変見事だった。

一方、リチャードは、劇団職員のソニア(クレア・デインズ)に魅かれて恋し、カリスマであるオーソンに反抗するが撥ねつけられる。
ジャズが軽やかに流れる中で、日中戦争のラジオ・ニュースやベッド・シーンを脚本に書けない時代…“Quadruple Space” (異次元の世界:本に書くことが出来ないシーンの暗喩)と言ってましたネ… をさりげなく描いていた。


映画を観て面白かったのは
◆◇舞台上演のジンクス◇◆
オーソンは月曜なのに災難がまだ起きないと真面目に怖れる。初日の舞台がひどい出来になるのを防ぐには、災難が悪霊を追い払うという古い迷信(ジンクス)を信じている。リチャードが起こした不祥事がこれになるとは…。

◆◇野心を持った女性達◇◆
登場する二人の女性は、野心的で活き活きしています。
ソニアは、上昇志向の強い女性で、デビッド・O・セルズニック(『風と共に去りぬ』を製作中の大物プロデュサー)に会うことを熱望し、アポを取り付ける。彼女は、男より仕事での飛躍を目指している。
目の表情がクルクルと変わるチャーミングな女性で、最初クレア・デインズとは判りませんでした。『レイン・メーカー』の頃とは、痩せて様変わりです。

もう一人は、ニューヨーカー誌に載ることを夢見ているライター志望のグレタ(ゾーイ・カザン)で、キラキラと若さを振り撒いている。リチャードと出会い、彼が取り持った縁で原稿が初掲載となる。何になるか解らない二人が、挫折を超えて踏み出して行くラストは爽やかでなかなか良かった。
彼女は、何と名監督エリア・カザンの孫娘だそうだ。


オーソン・ウェルズは、ティム・バートン作のエド・ウッドでも魅力的に描かれていた。本作でも「『偉大なるアンバーソン家の人々』は全てを失う男の物語だ。主人公は自分の父に似ている」としんみり語るシーンがある。この鬼才はハリウッドでの成功は果たせなかったが、この作品含めて『黒い罠』、『フェイク』等のユニークな作品を残している。未見のこれら作品を是非観てみたいと猛烈に思った。



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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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