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ドナルド・キーン著 『石川啄木』 角地幸男訳

石川啄木

美や芸術に対する真摯な思いは美しい


26歳で亡くなった夭折の歌人石川啄木(1886~1912)の本格的評伝である。手紙等の当時の言葉は、現代語訳が付いており、短歌もキーン氏の簡潔明瞭な英詩への翻訳もあり、378頁もあったが読みやすかった。

啄木というのは、知らなかったが故郷岩手県渋民村でその囀りを愛好したキツツキの事だという。
その生涯は、三つの時代に大別され、日戸村での出生を経て、小、中、高を渋民村で過ごす盛岡時代、函館、小樽、釧路を転々とした北海道時代、上京後の東京時代であり、彼を取り巻く人間関係やエピソードを丹念に描いている。
彼の伝記は、昔読んだことがあるが、傲岸不遜というか傍若無人というか余りに人格に問題があり、貧苦と病苦に喘いだ哀しい人生も自業自得じゃないかと感じていた。

今回の評伝は、北海道の新聞社で世話になった社主の排斥運動、恩人達への借金と踏み倒し等も詳細に描かれ上記を裏付けているが、自分のために赤裸々につけていた『ローマ字日記』を読み解くことにより啄木の内面、人間性を深く掘り下げている。
本書は、何よりも啄木への大きな敬愛に溢れており、卓越した詩人像が浮かび上がって感心した。


教えられたのは下記の三点である。

1. なぜ短歌を作るのか?
石川啄木は、言葉の感性が素晴らしく操り方が天才的で、数日で二百数十の歌をすらすらと作っている。上京後、与謝野鉄幹に連れられ森鴎外が主催する観潮楼歌会に出席し優秀賞にも選ばれている。

彼が何故短歌を作るかという問いに素直に答えている箇所があり、創作の秘密を見たようで胸を打たれたので引用しておく。
「人は歌の形は小さくて不便だといふが、おれは小さいから却って便利だと思っている。そうじゃないか。人は誰でも、その時が過ぎてしまへば間もなく忘れるような、乃至は長く忘れずにいるにしても、それを言い出すには余り接穂が無くてとうとう一生言い出さずにしまうというような、内からか外からかの数限りない感じを、後から後からと常に経験している。多くの人はそれを軽蔑している。軽蔑していないまでも殆ど無関心にエスケープしている。しかし命を愛する者はそれを軽蔑することが出来ない。(中略)一生に二度とは帰って来ないいのちの一秒だ。おれはその一秒がいとしい。ただ逃してやりたくない。それを現わすには、形が小さくて、手間暇のいらない歌が一番便利なのだ。実際便利だからね。歌という詩形を持っているということは、我々日本人の少ししか持たない幸福のうちの一つだよ。」(第13章 二つの詩論)

2. 優れた批評家、編集者の一面
啄木は、田舎の地でどうやって学んだか詳らかではないが、語学(英語)に堪能で原書を購入し、よく読んでいる。
若き日に岩手日報に書いた同時代人のワグナー論、これは音楽論ではなく思想家論、やオスカー・ワイルドへの言及は優れた知性の持ち主であることを示している。
また編集者としても優れていたようで、雑誌『スバル』、『二葉亭全集』の編集も務め、キチンと仕上げている。

3. 篤い友情
石川啄木は、生活者としてはジコチュー過ぎて他人の迷惑を顧みないところがあるが、三人の恩人に恵まれた。彼らは裏切りや反目を乗り越えて終生啄木を支えている。
①言語学者の金田一京助:同郷の出身の親友として金銭面の支援、変わらぬ友情を与えた。彼の子息は啄木の借金で家財を売る羽目になった父を見て、彼の祖先は大泥棒、石川五右衛門に違いないと思ったとある。
②妻節子の妹の亭主である宮崎郁雨:啄木一家を物心両面で支えた。晩年、節子との不貞を疑われたが、啄木死後も彼の名声普及に尽力した。
③土岐哀果:亡くなる一年前に出会い、没後、全集出版に尽くす。彼が居なかったらここまで石川啄木は有名にならなかったろう。

啄木のダイヤモンドのような才能は、死後も彼らを魅了し動かしたのであろう。彼等から観た啄木像も読んでみたいと思わされた。

図書館で借りた本を数日で読んでしまった。東北出身の太宰治、寺山修二なども同じ風土が生むメンタリティを持っていたのか気になってしまった。


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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

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