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小説「オールド・テロリスト」 村上龍(2015)

オールドテロリスト

カッコ付けない初老男性の生理と心理には共感するところが多かった


村上龍の新作である。図書館から借りて熱心に読んだ。表紙のイラストを見てユーモア小説かなと思ったが、冒険小説風でシリアスな内容であった。


定職を失い、妻子に逃げられた50代のルポライター セキグチ氏が不思議な予告電話から3件のテロに遭遇し、その黒幕を探っていく筋立てになっている。
3件のテロとは、①NHK玄関ロビーの放火、②大田区柳橋商店街での刈払機を用いた走行自転車の首刈り、③新宿歌舞伎町映画館でのイペリットガスを用いた大量殺戮で
平和な現代日本の姿が一変する。

謎を孕んで進行する前半がぐいぐい引き込む力があって良い。満州国の人間、日本刀の抜刀術、心療内科医師アキヅキの糸電話セラピー、延命装置を付けたフィクサー老人と謎めいたパズルの一片、一片が鮮やかに出現し、引き込まれてしまった。
アキヅキ医師がバリトンソロで囁く、ゾクゾクとする説得力も強烈だ。

後半は、セキグチ氏がチームを作って謎に迫っていくが、早々とネタバレとなり興がそがれた。
枯れていない老人達の姿は良く描かれていたが、「日本を焼け野原にすべきだ」との主張には、何故か? というところで説得力に欠けていた。
また若者の姿が、画一的な無力な生気を失ったステレオタイプとして描かれ、それはないだろうと突っ込みも入れたくなった。

深く感じさせられたのは、主人公らが大殺戮テロに遭遇した後、PTSDというか後遺症、トラウマに苦しめられる場面で、精神安定剤をガリガリ噛み砕いて水で喉に流し込むシーンが多く出てくる。また人生で最も辛いことは何かと自分に反問し、「大切な人に何も出来ない存在になってしまったこと」、「いやそれよりも後悔することだ」と気付くところなどは、ハットさせられた。
世界中でテロが起こっている現在、不幸にして巻き込まれた人は想像以上に後遺症に苦しむのだろうと思い至った。

枯れていない、まだまだやれると思っている70~90歳の老人達が、世の中に対して持つ不満や鬱屈感は分からんではないが、世直しは20~50歳の若い時代にやるべきと思う。その意味からは政治家も65歳以上は引退してほしいと切に願うものである。

本書は、村上龍らしく『コインロッカー・ベイビーズ』でのめくるめくような浮遊感が感じられるし、『半島を出よ』に見られた軍備の細部のリアリティにも溢れており、最後は肩透かしであったが、スケールは大きく十分に楽しめた。


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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

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