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映画「戦火のナージャ」(2010)

戦火のナージャ

戦場で生き残るのはフトした偶然だ


巨匠ニキータ・ミハルコフ監督の戦争三部作の二作目である。第一作太陽に灼かれて」(1994)は、1930年代のスターリン大粛清時代を背景に、豊かな田園で過ごすコトフ大佐一家が、奥さんの元恋人KGB大佐の訪問を受け、粛清の鉄槌が下される様子を恋愛三角関係も交えて詩情豊かに描いて、胸を打たれた作品であった。
本作は、第二次世界大戦の独ソ大戦を舞台に、生き延びたコトフとその娘ナージャの過酷な運命を描いてある。

映画の冒頭、池のほとりの別荘にスターリンが出てくる。本当にそっくりな役者で周囲の取り巻きは、彼の言葉の一つ一つにピリピリしている。誕生日を祝う大きなケーキ、スターリンの顔が描かれている、が持ち込まれ、俺の顔を皆が食うのかと不気味に尋ね、きまり悪い沈黙が漂ったとき、突如背後からコトフがスターリンの顔をケーキに押し付ける。
強制収容所のコトフが大声でうなされ、これは悪夢にだとわかる。ビックリするオープニングである。

前作では、コトフは銃殺刑、ナージャは強制収容所送りとなっていたが、本作では生きているらしいと秘密警察アーセンティエフ大佐が、スターリンから真実を探る様に調査を命じられる。
コトフとナージャの物語は1941年、アーセンティエフ大佐が探っていくのが1943年と時間軸と場面が行ったり来たりするので、注意して観ていないと混乱する。

話を理解すると、ナージャはアーセンティエフ大佐の采配で少年少女団(ピオーネ)に加わり、仲間の密告からも護られていたが、大佐から父は生きていると知らされ探そうと従軍看護婦となる。乗り込んだ赤十字船が飛行機の機銃掃射で遭難し、機雷に摑まって九死に一生を得る。大殺戮のあった田舎を逃れて、モスクワ攻防戦で看護師に従事する。しかし父と出会うことはなかった。

一方、コトフは政治犯強制収容所に収容されていたが、1941年6月独ソ開戦で逃げ出す。その後、一兵卒として懲罰部隊に入れられ、塹壕で武器も持たされぬままスコップだけでナチス戦車部隊と戦うことを余儀なくされる。

映画を観て関心したのは、下記の3点である。
①痛みを伴うような戦争の苛烈さ
本作は、戦闘の激烈さ、非情さ、迫力、凄惨さを繰り返し描いており、これは類がないほど凄いと思う。赤十字船への攻撃、戦車に押しつぶされ、肉片と化した姿、ドイツ兵との肉弾格闘、馬を徴用しようとしてジプシーの殺戮、平和の村の村民全員を納屋に押し込み焼き討ちするシーン等々、平穏な日常が突如地獄絵図に変わるところなど凄いなと思う。

②コミカルな味わい
人間のやる戦争は、悲劇と喜劇のカオスだと描いているのは優れた視点だと思いました。
大勢のロシア人を乗せた渡航する赤十字船に、ナチスの戦闘機が接近し、最初は見送ろうとするが、飛行機乗りが尻を出して糞を命中させようと挑発し撃たれる。これに怒り狂って、船を轟沈させ、大勢が亡くなる。
ナチスの戦車を味方が来たと誤解し、パニックになって銃剣で立ち向かう新米の下士官候補兵、塹壕で弾除けに役立つとドアを拾って背負っているコトフの友人と、戦場の悲惨さの中にも人間のおかしな愚行が散りばめられて強い印象を残す。

③底にキリスト教への信仰
ソビエトでは共産党政府は宗教弾圧をし、無宗教の立場であったが、この映画では、人々が生と死の境に置かれたとき、キリスト教を信仰する姿が描かれている。
ナージャが機雷に摑まって海を漂流している時、負傷したアレクサンドル司教に洗礼を受け、お祈りの言葉と十字架を与えられる。司教は彼女に希望を託し海に沈んでいく。
村民全員の焼き討ちを目撃したナージャは、半狂乱となるが、「私が生きているのは神が私を生かしたから、父と再会するのが神に与えられた私の使命だ」と再び生きていく決心をする。
ラストシーンは、瓦礫の中で両足を吹き飛ばされた少年兵をナージャが介護する場面である。(少)祈りの言葉を教えてくれ (ナージャ)全ての意思に委ねよ (少)おれの意思か (ナージャ)彼の意思よ (少)スターリンの意思か 
勿論、彼とは神を指すのだが、会話は噛み合いません。
最後にナージャに胸を見せてくれと頼み亡くなっていきます。彼女を背後から撮った映像は聖母マリアのようで神々しく感じました。

この映画には、父娘の再会のメロドラマ的要素は無く、ヒットラーとスターリンが人民に強いた苛烈な戦争の実態をひたすら描いています。重厚で忘れられない印象を受けました。



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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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