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映画「終着駅」(1953)

終着駅

人間に対する温かな眼差しが感じられる


採点 ★★★★

 地元の老人会で上映会をやるというので観に行きました。(ふれあいシネマサークル研究会~輝きシネマ劇場、無料) DVDをEPSONプロジェクターで映写するという簡素なものでしたが、途中休憩とコーヒーサービスを挟んであり、大変楽しめました。
主催された皆さん、有難うございました。
本作品は、DVDも持っているのですが、初めのところで挫折して観ていませんでした。

 ローマ テルミニ駅を舞台に、ジェニファー・ジョーンズとモンゴメリー・クリフトの恋の別れを丁寧に描いた恋愛映画です。
アメリカから旅行で来た夫も娘もいる主婦が、イタリア人青年と恋に落ち、別れる訳ですが、映画的には意欲的な構成と描写があり、最後まで見飽きませんでした。

 物語は、メアリー(ジェニファー・ジョーンズ)がジョヴァンニ(モンゴメリー・クリフト)のアパートを訪ねるものの、呼鈴を押すことなく駅へバスで向かう姿から始まります。駅でミラノ経由、パリ行きの列車が7時に出ることを知り、身の回りの品を持って来てもらおうと、姉の甥っ子に頼む。
 電報受付係でジョヴァンニに「急に去ることになった。いつもあなたを愛している」と打とうとするが、急に気が変わりホームに向かう。途中、売店で娘の洋服を買い、混雑している列車に乗り込む。
 列車が出発しようとする時、青年が駆けつけ、メアリーは列車を降りてしまう。
そこに甥っ子ポールがコートとスーツケースを届けにやってくる。
 ここから、二人の恋愛感情が濃密に浮かび上がって描かれていく。


 感心したのは、次の三点です。
①別れだけの恋愛映画 
 恋愛映画といえば、普通、男女の出会いがあり、恋に落ち、幸福の絶頂を経て、悲しい別れに至る経過が描かれるパターンが多く、デヴィット・リーン監督の『逢引き』などが典型的なものです。ところが、本作品は、前段、中段も飛ばして、男女の別れだけを描いているので、特異な印象です。過去の回想シーンなども一切描かれません。
しかし、演出に力があり、ヒロインが家族のもとに戻るか恋人に飛び込むかの感情の振れを上手に描くことにより観客を惹きつけていきます。

②時間の経過
 この映画は、夕刻の6時40分頃から8時30分過ぎまでをリアルタイムで描いて、つまり映画の進行と実際の時間の経過が同じに設定して作ってあります。
従って観る側も、時計の文字盤が出る度に、乗車までの時間を意識させられ、ハプニングが起こった時は、乗り遅れるのではないかとか、ハラハラさせられる巧みな演出でした。

③駅構内の多彩な人々
 駅構内で、ヒロインの眼に次々と入っていく人々が、多彩で生き生きと描かれている点が素晴らしい。
公衆電話口の好色そうな男、牧師の一団、老夫婦、修学旅行中なのか聾唖学校の生徒達、休憩所で具合が悪くなった炭鉱夫の奥さんと子供たち、警察署長、挙句の果てに大統領の来所まで描写され、目が離せなかった。
これらの描写には温かな情感が行き渡っており、監督の確かな手腕と脚本、カメラワークの見事さに感服した。


 本作品は、新駅、今見ても広大なモダン建築、の落成記念も兼ねて作られたそうである。大プロデューサー デヴィッド・O・セルズニック、(「風と共に去りぬ」、「レベッカ」等)がハリウッド俳優を使い、巨匠監督で一大メロドラマを作ろうとしたが、成功したのだろうか。

 私見では、セルズニックの思惑を超えて、つまり通俗に堕さずに、ヴットリオ・デ・シーカ監督の人間に対する温かな眼差しが発揮された作品に思えた。

 男優のモンゴメリー・クリフトは、熱情のイタリア人というよりはアメリカ人に見えて、二世という設定ではあるが、アメリカ人同士の恋愛に感じられて残念であった。
 セルズニックの奥さんのジェニファー・ジョーンズは、「慕情」では綺麗な人の印象でしたが、本作では、激しい情熱とそれを抑えなければならない苦しみの間に揺れる女心を良く表現する大熱演で感心しました。
 尚、甥っ子役が、8年後「ウエストサイド物語」で主役トニーを演じることになるリチャード・ベイマーだったとは驚きでした。

皆様にも是非お勧めしたいと思います。


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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

Author:ボクダノビッチ
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