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映画「砂の器」(昭和49年)

砂の器


最近、2回目を観たので直近の感想を書いてみたい。

この作品は、上演当時に友達が年賀状で感動したことを伝えて来て知った。私は友達からの本、映画、音楽に関する口コミは情報として大切にしている。そこで1回目を観た時は、幼い子供もいたので、父と子の苦難の放浪のシーンに涙茫々で胸一杯であった。
今回は客観的、分析的に落ち着いて観れたが、行き着くところ「自分の過去が本当に新しくリセットで出来るのか?」という根源的な疑問に囚われてしまった。

昭和46年6月の深夜、東京の蒲田駅操車場で初老の男が殺される。男の身元を追って、刑事が必死に解明を目指す中で、一人の新進天才作曲家が犯人として浮かび上がる。
犯人の辿った過去、宿命と言うべき運命にあがく人間の悲しい姿を描いたミステリー作品。

やはり、この映画は構成が非常に優れていると思う。
前半は迷宮入りと思われた殺人事件を、二人の刑事が執念を燃やして追い詰めて行くことが描かれる。今西刑事(丹波哲郎)が秋田県亀田、島根県亀高、石川県、伊勢、大阪とまわり、情報を足で稼ぐ姿が丹念に描かれる。
季節は6月から8月で顔に汗がにじみ、夏の暑さが良く伝わってくる。そういえば、あの頃は扇風機だけの生活だったなあ。
簡潔でテンポが良く、謎が少しづつ見えてくる、つまりジクソーパズルのパーツが少しずつ見つかって行くような感興を覚える。

後半は、捜査本部、業病を背負った父子の放浪、演奏会の三つのシーンが同時並行で進み、この映画の白眉ともいうべき見事な構成である。
今西刑事の説明で犯人の生い立ちから犯行に至る経緯と日本海沿いの四季を背景に父子の悲惨な流浪の旅が美しく描かれる。子供が見つめる小学校での体育の授業、雪の寒さの中で父子が食べる貧しいながらも楽しき食事、喜捨を求める先々での人々の冷たい対応、何回観ても胸が詰まる。

その情景と重なるように犯人和賀英良(加藤剛)のピアノと指揮でピアノ協奏曲「宿命」が初演される。
ピアノソロの中で、和賀の頭に浮かび上がってくる幼い頃の姿、元巡査の説得、生き別れした父親が生きているとの驚愕の事実、彼は音楽の中で父親に会っているだと言う今西刑事、羽を広げたような高揚した音楽が重い事実の物語をクライマックスに導いていく。

和賀は過去を消し去ったと思ったため、過去を知る人間が現れた時、抹殺しようとした。父と子の別れを強いた人間への復讐でもある。しかし、消したくても消えない過去、それが人生だと思う。
宿命を作曲せざるを得ない心情も、過去の束縛がなせる業でもある。

脚本は、12年前に橋本忍と山田洋次が仕上げてお蔵入りしていたものを橋本忍が練り直した形になっている。松本清張の小説をガラッと変えオリジナル作品に近い出来となった。
この脚本のおかげで、映画の方が際立って優れた作品に仕上がっている。

もう一つの主役は音楽である。宿命というピアノ協奏曲の主題がライトモチーフのように色んな場面で出てくる。曲が叙情的過ぎるきらいはあるが、堂々たる構成で永く印象に残る曲と思う。

作曲は芥川也寸志と菅野光亮が共同で当っている。芥川が全体の構成に当って、メロディなど実質的な曲作りは、菅野光亮が行ったようだ。

役者では、今西刑事役の丹波哲郎が熱演で大変光っている。正義感の強い凛とした姿を堂々と演じている。彼は声が良いなあとつくづく感じる。出張の帰りや仕事の後に若手の吉田刑事(森田健作)とビールを飲み仕事の進捗の話をするシーンや俳句を嗜む場面など良い人間味が出ている。         

もう一人の主役の加藤剛は、比較的のっぺりした印象で、苦悩とか怯えとか地獄を見てきた人間の陰りに乏しい。また大蔵大臣の娘で婚約者(山口果林)、愛人(島田陽子)と加藤剛との関係も上滑りで弱いと思う。
過去を清算してきた気持ちと過去に縛られ宿命を作曲する気持ちの葛藤や父親に会いたい思いなども描き込んだら深みが増したのではと感じた。

そういう訳で、この作品は今観直してみて、昔と変わらずに胸を打たれるところと、今ではやや古めかしく作為を感ずるところが混在していると思う。

しかし日本映画ではオリジナルな音楽を主役に据えた作品はこれまでは殆ど無く、異色の名作であるのは間違いない。
監督は野村芳太郎、撮影は名手川又昂で、毎日映画コンクール大賞を受賞した。

theme : 映画感想
genre : 映画

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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

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