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映画「ネットワーク」(1976年)

ネットワーク


シドニー・ルメット監督が描く視聴率に狂奔するTV業界の内幕物である。

脚本が優れているせいか、最初の20分位で会社の人間関係、権力図が流れるようにサッと示される。封切り時に映画館で観た時は、これが頭に入らず、社長が誰なのかも良く解からないまま観ていた。
20代前半で会社組織やビジネスの事を全く知らなかったからであろう。
また当時の日本では、自由にコメントを言うニュースキャスター制も確立されておらず、TV界が視聴率に右往左往する事も今日ほどでは無かったからかも知れない。

今回NHK BS2放送で再見すると、パディ・チャイエフスキーの良く練られた脚本の良さが解かり、この作品は時代を先取りしていたとの感が強い。彼は、本作のほか「マーティ」(1955)等でも3回のアカデミー脚本賞を獲得している才人である。
また実力派4俳優の演技のぶつかり合いは見応えがあり、達者なロバート・デュバルがヒヨッ子に見える程である。

物語は、全米4位で低迷するTVネットワークUBS社(Union Broadcasting System)が舞台。ネットワークとは、TV放送局と傘下系列の放映局の事、最近のPCの繋がりではない。
人気ニュースキャスター(anchorと呼んでいる)の初老ハワード・ビール(ピーター・フィンチ)は、視聴率が16→8%に低下し、二週間後の解任が決まる。
ニュース部門の責任者マックス・シューマッカー(ウィリアム・ホールデン)は、会長の信任も厚く、ハワードの長年の友人でもある。彼からハワードへ解任が伝えられる。昔を懐かしみ慰めながら酒を酌み交わす二人。
落込んだハワードは、生放送中に「次の火曜日に番組で頭を銃で撃って自殺する」と予告する。慌てたスタッフ達が彼を連れ出そうとし、ハワードは必死に机にしがみ付く。

UBS社の株主総会。3,300万ドルの赤字、報道部門の赤字を解消するためリストラを推進する事を野心家のフランク・ハケット(ロバート・デュバル)が宣言している。今やUBS社は、ジャンセン会長の通信会社CCA社(Communications Corporation of America)のコントロール下に置かれている。
ハワードは、サヨナラ放送で自我を曝け出し、TV業界の偽善をぶちまけたことから注目を集め、現代社会の偽善を告発する怒りの代弁者、現代の預言者として復活する。

エンターテイメント部門のプロデューサー ダイアナ・クリステンセン(フェイ・ダナウェイ)は、これに目を付けハケットの支援を取付け、ハワードのライブ新番組を作っていく。
マックスの解任やダイアナとマックスの不倫と別れ話を挟みながら物語は進んでいく。
ダイアナの番組は、地下共産党過激派による銀行強盗の実写も加わり、当初は高い視聴率を示していた。しかしハワードのアラブ・スポンサー批判や誰も聞きたくない暗い話が続く事から次第に視聴率が落込んでしまう。

製作側のダイアナ等は、ジャンセン会長お気に入りのハワードを番組から下ろせず、遂には放送中に彼を射殺し視聴率を上げる事を計画して行く。このような恐ろしい話である。

しかしTV業界物で視聴率に翻弄される人々というのは、今ではもう古いテーマかな。
それよりもビジネス社会の権力争いが強く描かれて興味深かった。学生時代にはピンと来なかったが、会社生活を過ごしてみると、新業務を拡大したA派がB派を追い落として行くというのは、なかなか普遍的なテーマだと思う。

当時のアメリカの世相として「ベトナム戦争、インフレ、不景気とアメリカ人は暗くなっており、自ら立ち直る力は無い」と映画の中で語られるが、1970年代半ばの停滞した閉塞感を映し出したものになっている。
同年「ロッキー」がアカデミー賞作品賞を獲得したが、そこにも暗い雰囲気を打破したいというアメリカ人の強い思いが込められていた。

主人公のピーター・フィンチとウィリアム・ホールデンは共に名演技だと思う。狂気に取付かれたようなフィンチの演技は素晴らしい。アカデミー主演男優賞が決まるが、受賞前に急逝した。
ホールデンの方は、良く知っており肩入れして観ていたが、誠実な報道の姿勢を貫き、視聴率だけに左右されず、狡さも呑み込んで威厳のあるTVマンを重厚に演じている。
皺は増えたが、テキパキとした話しぶりで、話の間の取り方やその際の表情には味がある。
「サンセット大通り」、「ピクニック」、「戦場にかける橋」、「慕情」、「ワイルドバンチ」と硬軟交えた長年の彼の演技を思い出した。

フェイ・ダナウェイは、視聴率を上げるためなら何でもするワーカホリックな新進気鋭の女プロデューサーを熱演している。嫌味な役だけど何かしら魅力がある。アカデミー主演女優賞受賞。

これら実力派俳優に交じって、ホールデンの25年連れ添った奥さん役にベアトリス・ストレイトが出ている。主人に裏切られ諍いを起こす役。眼と話し振りに力があり、僅か5分強の短い登場時間だが、アカデミー助演女優賞をさらっている。

印象的なシーンがある。CCAのジャンセン会長がハワードを呼び、役員会室で二人だけで話す。「現代はソ連の共産党も力を持たず、現実の世界を動かしているのは、主義や思想ではなく経済のみが世界を支配している」と小さな灯りの下で滔々と語りかける会長、それを天啓のように恍惚とした表情で耳を傾けるハワード、まさに神が預言者に宣託を下すような神々しい場面に感じられた。

映画は愉しんで観たが、残念な点があった。カラー映像が古びてくすんでおり、昔はもっと鮮明だったと思う。60-70年代のカラー作品は保存状態が良くないものが多く、これも例外ではないようだ。誠に残念。

社会派ルメット監督の作品は、俳優の造形が鮮やかで忘れ難いものが多い。「質屋」のロッド・スタイガー、「12人の怒れる男」のヘンリー・フォンダ、「狼たちの午後」のアル・パチーノ、「殺人調書Q&A」のニック・ノルティと際立った人物像が直ぐ思い出される。
本作品でもウィリアム・ホールデンとピーター・フィンチの熱演は圧倒的で、演出の冴えを感じた。
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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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