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映画「ロープ」(1947年)

ロープ


パトリック・ハミルトンの舞台劇を基にアルフレッド・ヒッチコック監督が作ったサスペンス映画である。ヒッチコックにとって初のカラー映画で、48歳と脂が乗り切った時期の作品である。戦後二年目にこんな豊かな余裕のある作品を生み出していたなんて、今更ながら日米の国力の差を感じた。映像は今観てもきれいである。

私は、ヒッチコック作品は好きで熱心に観ており、これは今回初めて観たのだが、意外と拾い物であった。技法に着目して繰り返し観たが、二回目の方が面白かった。

NYマンハッタンの高層アパートで超人思想の大学生二人が友人をロープで絞殺し、遺体を室内のチェストに隠したまま、被害者の関係者を招いて、スリルと優越感を味わうパーティを行なうというお話。完全犯罪が、少しずつほころんでいく様を丁寧に描いている。

ここでヒッチコックは思わぬ実験に挑戦している。即ち、撮影を途切れることなくワンショットで撮影しようとしているのである。
勿論、フィルムは一巻10分なので繋ぎが生じるが、その場面は人物の背中や室内の家具を映し続いてる様にみせている。従って観客は1時間20分の物語の進行そのものをリアルタイムで覗き観る様な感興を覚える。

摩天楼を見下ろすアパートの大きな窓のある居間が中心舞台である。移動車を使って、カメラは3室を自在に動き回るが、登場人物の動きに焦点がピタッと合って、8人全員がワンフレームに納まる所などは、良く計算されていると感心した。
フランソワ・トリュフォーのインタビュー「ヒッチコック映画術」(晶文社)を読むと、夏の夕方7時半から9時15分までを描いており、窓越しに見える雲と空を少しずつ変化を持たせ色合いを日中から夕日、夜へと変えていく工夫が詳しく論じられている。
撮影風景の写真を見ると、スタッフ25名が舞台を取り囲んでおり、俳優含めてミスが許されない長廻し撮影は、大変な緊張であったろうと思われる。

物語は、穏やかな日差し下、アパート前の道路の風景から暗い室内へ入っていく。大学を出た二人組の青年ブラントン(ジョン・ドール)とフィリップ(ファーリー・グレンジャー)が、同級生のデイビットを絞め殺し悲痛な声が響きわたるところから始まる。
自信過剰なブラントンと不安で繊細なピアニストのフィリップ、二人は同性愛者らしい。
ブラントンは、優れた人間は劣った者を抹殺しても良いとの考えで、殺人のスリルを楽しみ、完全犯罪に酔いしれようとしている。

遺体をチェスト(本箱)に隠し、この芸術作品の仕上げとしてパーティを開催する。
チェストの上に燭台を灯し、料理を並べ、絞殺したローブで本を束ねて父親にプレゼントするというキリスト教を冒涜するおぞましいアイデアに嬉々としている。

登場人物は、家政婦ウィルソン(エディス・エヴァンソン)、デイビットの父ケリー(セドリック・ハードウィック)、伯母アトウォ-ター夫人(コンスタンス・コリアー)、デイビットの恋人ジャネット、友人でジャネットの元恋人ケネス、教え子たちの先生である大学教授ルパート・カデル(ジェームズ・スチュアート)含めて8人である。
ジャネットは、ヒッチコック好みの芯の強い女性で、ブラントン→ケネス→デイビットと恋人を変えてきて、その鞘当ても描かれるが、意外と印象が浅い。

様子がおかしい事を伝える家政婦やNY滞在2週間の伯母は、おしゃべりで雰囲気たっぷりである。会話にJ・メイソン、E・フリン、C・グラント、バーグマン等の映画俳優名が多く出て来て、映画名をsomething something(あれ、あれョ)と楽しげに語り合う様子は微笑ましい。

ジェームズ・スチュアートが、犯行を暴いていく訳だが、ブラントンが超人思想の議論で興奮する様やチキンを絞め殺す話で、フィリップが不安に苛まれ、グラスを割り手を怪我するシーンが重なり、疑惑を深める。強気と弱気の二人の組み合わせで、いつ犯行を告白するかハラハラドキドキをヒッチコックが上手に演出している。
最後に帰り際で受け取った帽子のイニシャルDKを見て、彼らの犯行を確信する。

犯行が判ってくるクライマックスでは、意外とドラマが盛り上がらない。今回のワンショット撮影は、ここでは、だらだらと間延びした印象を与え、サスペンス的迫力に欠ける。ここは、やはりカットを重ねて畳み掛ける手法が、一層緊迫感を高め有効だと思った。

今観ると、二人の超人思想には、幼稚さも混じり、ジェームズ・スチュアートが、犯人をヒットラーの思想か、お前は神かとなじり、人間性を侮辱し文明を貶めていると力を込めて非難する場面にもやや違和感を感じた。殺人にいたる動機に無理がある気がする。

書斎で初版本が出て来るが、哲学の本を書いている人の話題が出て、ジャネットがその本を指して、
‘small print, big words, no success’(細かな文字で大げさなことが書いてあり、成功しない本ネ)と軽く言うシーンにはユーモアを感じて笑えた。

ヒッチコック作品は、映画館の大画面で観たほうが良さが良く判る。「海外特派員」の終盤で飛行機が海に墜落する場面があったが、セットでの撮影とは言え、風防ガラスに海面が迫ってくるシーンなどは、大画面で観ると興奮するような迫力があったと思う。

本作品は、「裏窓」に似た感じなので、ヒッチコックの実験精神を味わう意味でも大スクリーンで観てみたい誘惑にかられた。

尚、日本公開は1962年と遅れ、当時は、このようなサスペンスは当らないと敬遠されたらしい。
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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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