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映画「ジョニーは戦場へ行った」(1971年)

ジョニーは戦場に行った


「太陽と自分の死は直視できない」(ラ・ロシュフーコー)と言われるが、この映画もこれらと同様に、自分がこうなったらと思うと観るのがとても辛い作品である。
第一次世界大戦にアメリカが参戦し、従軍して、両手、両足、眼、耳、口を失った戦傷者を主人公にした反戦映画である。
現代の戦争は、かくも残酷な結果を個人にもたらすものだと静かに強烈に訴えている。

ダルトン・トランボが書いた小説を、65歳の時に自ら初監督し映画化した。トランボは、原作、脚本、監督と三役を果たしている。ベトナム戦争の最中に作られており、老いた監督の強い意思と執念を感じさせられる。

ダルトン・トランボ監督は、インタビューにこう語っている。
「死者たちの記憶が夢に現れ、そのために叫び声を立てる事が、我々にあるのか ? いいえ、我々はそんな夢を見ない。何故ならそんな事を考えないから。」
「我々の中にいる戦傷者を考えたことがあるのか。彼がどこにいるのか誰か知っているのか ?  我々は知らない。問おうともしない。我々は彼らから眼をそむけている。」

アメリカは南北戦争以後、国内戦を経験しておらず、国民は悲惨な戦死傷者を身近なものとして受け止めずに来ている。これは今日まで続いており、絶えず国外で戦争を作って来た歴史によるものだと思う。従って、戦争は英雄的で甘美なものに転化されやすい。

ダルトン・トランボは、ハリウッドの名脚本家として地位を築いていたが、1947年のマッカーシズム赤狩りの公聴会で仲間を明かす事を拒否し、有罪判決を受け、投獄、ハリウッドから追放された。
彼は、ハリウッドの作家・役者らの組合の権利向上キャンペーンを行っており、共産主義を信念堅固に信奉する者というよりは、それが掲げる自由、友愛にシンパシーを感じていたと言われている。
赤狩りのハリウッドテンとしてシンボリックに扱われ、エドワード・ドミトリック監督他10人の仲間が追放された。

その後、偽名や友人名で脚本を書き続け、辛酸を舐めた生活から、「黒い牡牛」、「ローマの休日」、「スパルタカス」、「パピオン」等多くの名作を生み出している。
手足をもがれた状態で仕事を続けてきた悲痛な思いが、この作品にも凝縮されている。

映画は、出征兵士ジョー(ティモシー・ダルトン)がドイツ軍の直撃弾で負傷し、頭と胴体だけで倉庫に横たわっている。軍医と看護婦から、一個の物体のように扱われる彼にも次第に意識が戻ってくる。自分がどうなっているのか必死に知ろうとする苛立ちと、一つの肉塊に化したことを知った時の驚愕と深い絶望が描かれる。
戦場で何が起こったのかとか、故郷での楽しい思い出や幻想が途切れ途切れに出現し、現在と交差して行く。救いの無い現実は白黒で、過去の思い出は淡いカラーで描かれる。

釣りが好きで上等な釣竿を作っていた父(ジェイソン・ロバーツ)、優しい母、出征前夜の恋人カリーン(キャシー・フィールズ)との契りと駅での別れ、勤めていたパン工場でのクリスマス・パーティ‥ 過去の夢は、儚く甘美でどこまでも優しい。

ジョーは、暗黒の現実にも少しずつ変化を感じるようになる。
看護婦の歩く振動、開け放った窓から太陽の光を浴びる喜び、そこから1日を数えて頭の中に暦を作っていく事。皮膚だけが外界を感じ取る事が出来る。
看護婦長が、患者の状況がどうであれ、毅然と本来の看護をすべきと指示する姿は胸を打つ。深い同情を寄せる若い看護婦も、ジョーの胸にメリー・クリスマスの文字を書いて、ジョーを喜ばせる。何も感じていないと思われた肉塊から感情を持った人に変化していく様子は、感動的である。

ジョーは、遂には頭を揺すってモールス信号で言葉を伝えていく。「SOS SOS ここから出してくれ。そして、人々に自分を見世物にしてくれ。それが駄目なら殺してくれ」
軍医たちは驚くが、訴えを無視して、再び暗闇の中にジョーを閉じ込めていく。虚空に浮かぶSOS SOSのメッセージ‥‥。

映画を再観して、正面切った反戦の主張以外に強く感じたのは、次の3点である。
①人間の条件とは
人は、何か達成出来ること、期待出来ることがあれば、どんなに小さな事でも希望に胸を膨らませて生きていける。また自分が怪物と蔑まれ、見世物になってでも、人とのつながりが無ければ、生きて行けない。
当たり前かも知れないが、希望と人との繋がりの重さに、ハット気付かさせられた。

②アンチ資本主義
回想の中で、父親は、牛に沢山牛乳を産ませることも鶏や豚を育てる事も上手に出来、釣り道具も上手に作って誇らしげである。家族を幸せに育てたが、金儲けと言う点では落伍者だと愛惜を持って描いていている。ノスタルジックな自然の中で農本主義とも言うべき豊かさの主張をさりげなく伝えている。

②戦争の欺瞞性
 先に書いたように、国家はデモクラシーを守るため、自由のため銃を取ろうと若者を戦争に駆り立てる。しかし、ジョーのような普通の若者は、これらの言葉の意味が判らず、親に聞いても判らない様子が描かれる。これらの言葉・スローガンが、本当は空虚で欺瞞に満ちたものであることを強く示している。

当時アメリカの兵士募集キャンペーンは、“Johnny get your gun”と銃を取れば、明るい未来や信じる社会が築けるといったニュアンスの現在形である。
一方、映画の原題は“Johnny Got His Gun”と過去形に変えられ、不適切な楽観主義を非難し、銃を取った後にもたらされた事が何だったのか重く問い質している。

映画は、キリストが出てきて対話するシーンや幻想シーンなどでは、意味が取りづらく未熟な演出も感じたが、回想シーンの瑞々しい映像と真実を感じさせる点が幾つかあり、忘れ難い作品となっている。
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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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