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黛まどか著「星の旅人」(2000年光文社)

星の旅人

明るく透明な聖地巡礼


先週名古屋、横浜に出張しましたが、帰りの新幹線で悪寒と筋肉痛に襲われました。翌日、会社を休んで病院で検査したところ、インフルエンザA香港型とわかりました。予防ワクチン接種も受け、外出時にマスクをしていても罹るときは、罹るものですね。
医師より新薬の抗ウィルス薬「イナビル」(第一三共㈱)を処方されました。これは吸入粉末剤で、その場で薬剤師の指導の下に三回肺に吸い込んで終わりです。
丸一日寝て、熱は平熱に戻りました。効能が高いものだと関心しました。
タミフルやリレンザは4~5回の服用が必要なので、こちらが便利です。
まだ鼻水が出て回復途上ですが大分良くなって来ました。

さて、外国への旅行記や滞在日誌が好きで、行ったことが無い所には興味があり、時々は本を買って楽しんで読んでいます。これも単にスペイン北西のサンティアゴ訪問記かと思い、買ったままになっておりました。
でも読み出すと、良い意味で当てが外れ、深く本の世界に没入してしまいました。

キリスト教徒には、三大巡礼の路があるそうです。ローマの聖ペトロの墓を詣でる第一の道、エルサレムのイエスの墓を詣でる第二の道、そして第三の道がサンティアゴ巡礼の道です。サンティアゴとは、聖ヤコブのスペイン語読みでキリストの十二使徒の一人で最初の殉教者です。
9世紀にこの地で墓が発見され、イスラム教への失地回復運動、12~14世紀にかけての全ヨーロッパの大巡礼運動に広がっていきます。最盛期には年間百万人もの人々が巡礼しましたが、それ以降は見捨てられ、20世紀半ばまで見向きもされなくなります。

この本は、女流俳人の黛まどかさんが、サンティアゴ巡礼道のフランスのサン・ジャン・ピエ・ド・ボーからスペインのサンティアゴ・デ・コンポスデーラまで800kmを単身徒歩で歩ききった記録です。5~7月にかけて36歳の華奢な女性が、7kgのリックサックを背負って毎日、20~40kmを歩き、平地だけでなく険しいピレネー山を越えたりもする。
足に肉刺(まめ)ができ化膿して動けなくなったり、ダニに皮膚をやられたり、高熱を発したり、苦難に面するが、筆致はあくまでも軽やかである。


まどかさんは、ブラジル人パウロ・コエーリョの『星の巡礼』(角川文庫)に霊感を受けて旅立ったが、当時は仕事に追われて胃潰瘍になり、自分を見つめなおすために必要な旅だったようだ。
全51話からなり、1日1話のペースで書いてある。タイトルと俳句から始まり、各話は800字位なので、情報量は少ないが、道中を想像しながら読んでいくと楽しい。

読み始めて強く興味を抱いたのは、次の2点である。
1.巡礼の旅を始めて、本人の内面がどう変化して行ったか。
2.大巡礼が成就した時、大歓喜に震えて感動したか。

これらは私の予想を超えていた。

巡礼は四期に分かれるという。第一期は過去の事を振返る時期で日本の事、子供の頃のこと、恋人のことを断片的にしきりと思い出す期間、第二期は突き詰める期間、第三期は離れる期間、第四期は再生の期間という。
西へ西へと、午前中は自分の影を目指して、午後は自分の影を背に歩くという行為は、自分の来し方を見直すことになるのであろう。
この巡礼には、世界中の老若男女が参加しており、少しずつ交流が生まれてくる。当初は競うようにアルベルゲ(巡礼宿)に着き、良いシャワー・宿泊所を確保しようとする動きも、他の人に譲ったり食事を振舞ったり、相手を思いやった心の交流に育ってくる。

作者は、巡礼が終わるという時、歓喜の涙に咽ぶに違いないと想像していたが、そんな想像は見事に覆されて、今日の到着は昨日の到着と何ら変わらないことに思い至るのである。
これまで行き先を示してくれた黄色い矢印が今日からは無いという厳然たる事実があるだけだ。
サンチャゴから西へ90kmの岬で、巡礼中に使ったものを海に投げ捨てることになる。1000年前から続く習慣で、生活が虚から実へ変わる瞬間で美しいと思う。

非カソリック教徒であるため、キリスト教への疑義や信仰告白、奇跡を願う心、ブニュエル映画に見られる神学論争などは殆ど出て来ないが、芭蕉の心が良く解るという《旅の持つ非日常性》が強く浮かび上がってくる。

アマポーラ 西班牙の日は矢のごとし   黛 まどか
(アマポーラとは、ひなげしのこと)


たまには、こういう本で非日常の世界を垣間見るのも良いと思いました。
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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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