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映画「煙突の見える場所」(昭和28年)

煙突の見える場所


NHK BS放送で初めて観たが、古い映画にもかかわらず新鮮な感動を覚えた。

戦後、間もない頃、のんびりした東京の風景をユーモラスに描いており、皆、貧しかったが、明るく、何故かしら懐かしく感じさせられた。
感心したのは、主人公の緒方家に赤ん坊が捨てられてから、それまでバラバラに動いていた登場人物達が、泣く事だけしか出来ない無力の赤ん坊に動かされ、それぞれ人間関係を深めて行き、最後はハッピーエンドになる点である。
見事な作劇である。

荒川の土手の下にあるオンボロ借家に中年の緒方隆吉(上原謙)、弘子(田中絹代)夫婦が住んでいる。家賃は月3000円と格安。二階二間を下宿人二人に貸している。税務署員の久保健三(芥川比呂志)と上野商店街で街頭放送をしている東仙子(高峰秀子)で、朝食付きで月2000円と1700円である。
両隣は、7人の子沢山で詮索好きなラジオ修理屋とホッケバアサンと呼んでいる新興宗教の祈祷所夫婦で早朝から太鼓をたたいて大変喧しい。
亭主は日本橋の足袋問屋に勤め、女房は、内緒で競輪場で両替のアルバイトをしている。

ある日、緒方家に赤ん坊が捨てられる。夫の隆吉は、弘子を責め、空襲時の弘子の悲惨な過去が明らかとなる。弘子は、戦時の混乱から前夫「塚原忠三郎」と音信不通となり、亡くなったものとして、新たな戸籍で隆吉と夫婦になっていた。

赤ん坊は、塚原の仕業だが、気の弱い優柔不断の隆吉は、重婚の罪に怯え、警察に届けることもままならず、右往左往する。
赤ん坊の泣き声に夜も眠れず、責められた弘子は、家出し入水自殺の騒ぎを起こす。
二階の二人にも話は筒抜けで、二人は緒方夫婦を何とか助けようとする。

上原謙は、美男子で画面を引き締めているが、気が弱くオロオロする姿が妙に可笑しい。入水騒ぎの際の芥川比呂志との遣り取りで「何で助けないんですか」、「どうやって助けるんですか」と実行力の無さをさらけ出す。

騒ぎの後、健三は「これは正義の問題だ」と言って、勤めを休み、足を棒にして、赤ん坊の親を探し当てる。
騒ぎの最中、赤ん坊は高熱を出して重病に罹り、医者からも叱責され、いつしか夫婦は本気で心配し、一晩中看病する。
赤ん坊の熱が下がって、実の母親が引き取りに来るが、夫婦は今度は放したくないと言い張る。
結局、赤ん坊は母親に引き取られ、二階の健三、仙子は来月から一緒になることが決まる。
昨日まで赤ん坊が寝ていた畳の上を、新聞紙が風に吹かれて飛ばされ、もう赤ん坊は居ないんだなと示し、以前の日常が再開されるシーンは爽やかで印象的である。

この映画は夫婦の機微を上手に描いており、妻が病院に行ったと聞いて、隆吉が妙に期待する所やカレンダーの印を眺めるシーンなど秀逸である。

田中絹代は、演技は上手なんだけれども、夫をどれほど愛しているか感情表出がイマイチな感がした。
芥川比呂志は、正義感の強い生硬な青年で絶えず話している役だが、寄せる思いを高峰秀子に伝える場面などは、力みが抜けて好演である。
高峰秀子は、生活力と現実を見つめる力がある役で、芥川比呂志が見つけてきた赤ん坊の両親を、もんきり型に悪しく言う点をピシャットたしなめている。こちらも好演。

下駄履き、小さな炬燵、裸電球等の当時の生活の細部が描かれ、何も無い生活でも未来に希望を持っているせいか、人間が活き活きしている。
プライバシーも殆ど無く、周りの人が、困った時に口を出して関わってくる生活は、今日では無くなってしまったが、妙に懐かしい風景である。

色々な当時の物価が出てきて興味深かった。鯛焼き一個5円、ワンタン60円、肉コマギレ80円、自転車1400~2500円等々、食事も貧しいものである。

音楽は、芥川也寸志作曲。後年の洗練された重厚な響きは無いが、軽やかな動きで、時折ユーモラスな曲調が出てくる。メロディーラインのみで音楽の挿入が多いが、才気を感じさせる。

撮影は三浦光男、室内でも顔のクローズアップや下から見上げるシーンが多く、工夫を凝らしているなと感じさせられた。

お化け煙突は、漫画「三丁目の夕日」や「こち亀」でも描かれているが、千住火力発電所の84mの高い煙突で昭和38年まであった。見る場所により、1本から4本まで見え方が変わり、この名が付いていた。
この映画では、物事の見方で見え方が変わる様をさりげなく示している。

キネマ旬報第4位、小国英雄脚色、五所平之助監督の代表作である。
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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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