スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
line

映画 「紀ノ川」(昭和41年)

紀ノ川


松竹大船撮影所の総力を挙げた女性文芸大作である。有吉佐和子の自伝的小説を久坂栄二郎が脚色、中村登が監督した。
明治、大正、昭和と生き抜いた紀州旧家の大地主に嫁いだ女性の一生を描いている。

とっても静的な映画で、登場人物は善人ばかりで悪人は出てこず、長すぎてやや退屈である。3時間強、第一部と第二部の間に休憩がある。この頃は休憩のある大作が多かった。
波乱万丈の生涯と違って、淡々と恵まれた生活を送る女性の一生であり、面白味に欠ける。
せめて自伝的な年代記は、時系列をクライマックスからスタートさせる等の工夫を凝らしても良かったのではないかと思う。

第一部は、花の巻
主人公の花(司葉子)が紀ノ川を5艘の船で下り、紀本家から真谷家に嫁入りする豪華絢爛なシーンから始まる。人々は家の格を比較し、流れに沿うて良しと称える。
夫の敬策(田村高廣)は、温厚な性格の長男で若くして村長をしている。
次男の浩策(丹波哲郎)は、病を得て大学中退し、家でブラブラしている。ややヒネた性格。
紀ノ川氾濫と護岸工事計画、日露戦争、次男に全ての山を譲渡し分家する事等が続き、花は、長男穣生、長女文緒(岩下志麻)を授かる。

第二部は、文緒の巻
昭和となり、夫の敬策は、中央政界へ進出を果たし、長女文緒は、母親の昔風の生き方に反発し、女学校、大学で男女同権の新思想に共感する。花は、夫が妾を囲っていることも影響してか、ヒステリーを発散するように娘と激しく諍いあう。
文緒は、同人仲間の晴海栄二と結婚し、上海に渡り、帰国して、長女華子を生む。
敬策が亡くなり、終戦で農地没収となり守り続けた家も無くなってしまい、花は、孫娘 華子と心を通わせながらも、明治、大正、昭和三代に渡る生涯を終える。
晩年の母娘の和解を見て、歳をとってから、お互いの事が思いやられて解かり合えるのは、本当だなと思うし、シミジミと美しいと思う。
親子喧嘩は何回しても縁が切れないというのは、真実ですなあ。

主人公花の生き方の理想は、孫が蔵で見つけた懸賞論文に明らかである。
「女子として生を受けたる吾に他家へ嫁ぐは、これ人の道ぞかし。家魂を担って、一旦嫁したる上は、身を灯明の油となして、この家の光を絶やさざらんこと、吾が務めならん」

『家の灯明の油とならん』とは、花の本心であったのだろうか。祖母(東山千栄子)がトルストイやドストエフスキーを読むような開明的な家柄で、どうなのかなとの感が拭えなかった。有吉佐和子は、主人公を“家を護るしとやかな芯の強い女性”として理想化し過ぎている気もする。実母と佐和子の関係は、文緒と華子のモデルといわれるが、両者の愛憎ある関係も、ここでは稀薄でひたすら美しく描かれる。

戦争で自分が信じたもの、愛したものが、無くなってしまい、儚さを感じる中で、孫娘にほんのりと希望を託すといった陰影を強く打ち出したらもっと深みが出たのではないかとも思える。

主人公の司葉子は、22歳から72歳までを演じ、文字通り一世一代の熱演である。年を取って枯れたような役にも成りきって好演である。
田村高廣、丹波哲郎は、だらしない男性陣の役柄を落ち着いて上手に演じているが、丹波が司葉子に秘めた思いを持っているところは、はっきり判らないので、もっと強く表出したら良いと思った。
紀州弁の会話が盛んに出てくる。語尾に「のし」、「よし」を付け、柔らかな感じがして面白い。

音楽は、創作意欲旺盛な時期の武満徹である。彼は、楽器ではティンパニーとトランペットが嫌いで、西欧音楽のティンパニーの低音の上にガッチリ構築されたベートーヴェン的音世界ではなく、底が抜けたような音楽を創るんだと述べている。

本作では、クラリネットに導かれ弦楽合奏に至る抒情味ゆたかな透明な音楽が広がっている。メロディも1回聴いただけでは隠し味のようで捉え辛いが、繰り返し聴くと美しい曲だと判る。そこに邦楽器の鉦や琴の響きが加わって、凛とした緊張感で画面を引き締めている。
武満は、1960年代に映画音楽に邦楽器の響きを導入し、心象風景やドラマの対立を音で描き、映像を深める効果を発揮させて来たが、ここでも邦楽器の響きが見事に生かされている。

武満徹が組んだ映画監督は、勅使河原宏、篠田正浩、小林正樹、大島渚、黒澤明、成島東一郎等の芸術家肌の監督達である。中村登監督は今から見るとプログラムピクチャーの職人だが、引き合う点が多かったのか多くの作品で組んでいる。
中村登監督は若き武満の才能を高く買っていたようで、松竹助監督時代の大島渚に、「彼は、ジャン・ルイ・バローの再来だ。」と最大級の賛辞で紹介したとある。
最盛期の映画界は、若き才能を自由に発揮させる場でもあった。

撮影は成島東一郎。今では観られぬ、滔々と流れる紀ノ川を美しく捉えており、激しい女性のドラマも遠景のように感じられた。
line

comment

Secret

line
line

line
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
line
プロフィール
映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

Author:ボクダノビッチ
FC2ブログへようこそ!

line
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

line
最新記事
line
来訪者数
line
最新コメント
line
月別アーカイブ
line
カテゴリ
line
sub_line
検索フォーム
line
RSSリンクの表示
line
リンク
line
メールはこちらから
ご意見・ご感想をお待ちしております。

名前:
メール:
件名:
本文:

line
QRコード
QR
line
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

line
sub_line
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。