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映画「一枚のハガキ」(2011年)

一枚のハガキ

戦争への凝縮・純化した憎しみは、若々しき希望に転化する


新藤兼人監督99歳の新作である。観る前、高齢のためステレオタイプの反戦映画だったら嫌だなと懸念したが、全くの杞憂であった。

周りの事象・風俗を極力切り捨てて、主人公とそれを取り巻く人物だけに焦点を集めて描いている所が新鮮に感じた。
演技は、シンプルな能のようで、役者の力量が試されるが、大竹しのぶ、豊川悦司はクローズアップの映像が多い中で怯むことなく見事に演じている。
戦争の犠牲となった個人の悲嘆、理不尽な思いが良く伝わってきて良質な映画だと思う。
主人公二人が燃え尽きた母屋の地に麦を蒔き、豊かに麦畑が実るところで映画は終る。
踏みつけられてきた二人の再生と未来に向けての希望が鮮やかに描かれ、清々しい感動を受けた。

戦争末期、二等兵松山啓太(豊川悦司)が、仲間の兵士、森川定造(六平直政)から、生き残ったら妻友子(大竹しのぶ)にハガキを読んだ事を伝えてくれと頼まれ、戦後、届ける話である。
兵士100人は、クジにより赴任先が決まり、フィリピンに向った定造は戦死し、啓太を含む6人のみが生き残る。
終戦後、啓太は島に帰郷したが、妻は実父と関係し出奔していた。虚しくなった啓太は、家、船を売り払って、ブラジルに旅立とうとする。その時、ハガキのことを思い出す。

定造の妻友子は、老齢の舅姑と山間の僅かな畑を守っている。水道、電気もない貧しい家で、友子は毎日、川から水汲みを行い、母屋の離れの納屋で寝泊りしている。
定造亡き後、老親に懇願され次男三平(大地泰仁)の嫁になるが、三平も戦死。

村人の出征と戦死を送り迎える儀式が、型通り繰り返される様子を、定点カメラが静かに写している。受け取る白木の箱には名前だけで何も入っていない。
舅は脳溢血で、姑は後追い自殺で相次いで亡くなり、友子は1人となり、健気に生きて行く。思いを寄せる村の総代の泉屋吉五郎(大杉蓮)がめかけになれと迫るが、友子は相手にしない。吉五郎は、しつこいストーカーかなと最初思わせていたが、大杉蓮の好演もあり、サッパリした気性の持ち主であった。

啓太の訪問で友子は長年耐えて来た悲しみを爆発させ、ドラマが大きく動いていく。
友子は「何であなたは生きているの」と食ってかかるが、定造と自分の運命がくじだったことを伝えた。二人の対峙は、凛とした緊張感があり見応えがある。
一泊し啓太が友子と旅立とうする時、定造、三平の遺骨箱を火にくべるところから、友子は狂気に支配されるように家に火をつけ放心する。必死で引きずり出す啓太。母屋が燃え尽きた後、啓太はこの地に麦を蒔こうと提案する。力強い言葉である。 

これは今日的な映画である。とも子のあからさまに他人を罵り、あんたが代りに死ねばよかったと叫ぶ姿は、現代の女性の姿にも見える。昔は、グッと悲しみを押し殺して、ここまで相手に発散しなかったとも思う。 

冠婚葬祭が印象的に描かれている。
費用も無い中の村人による舅の埋葬、姑が教えてくれた僅かな金を使い尽くしての葬儀、それから終幕近くの大蛇退治を演じる神楽による婚礼の祝祭は、昔はこうだったんだということが描写される。
また、嫁いで来た時の着物を売って米酒を買い、また川から水を運んで風呂を沸かし、貧しきは、貧しきなりに客人をもてなすそうとする心根も良く描かれている。
久しく忘れていた日本人の持っていた美点、良き風習を思い出させてくれた。

この映画で残念だなと思ったのは、衣装である。友子はモンペではなく、スパッツのようなズボンを穿き、吉五郎、啓太の上着も当時としては派手な感じである。映像的な鮮やかさを狙ったのか気になった。

新藤兼人監督作品を初めて観たのは、連続射殺犯を描いた「裸の19才」であることを思い出した。確かATG作品であった。全共闘運動が盛んな頃で同時代性が強かったが、高校生の自分は、社会を批判する監督の姿勢に何かが違うと反撥した事を憶えている。
40年後の本作品は、戦闘行為は描かず、純粋に戦争の悲惨さだけを描き、戦争があったことを風化させてはならないという監督の持続する志の頸さに心をうたれた。
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まとめtyaiました【映画「一枚のハガキ」(2011年)】

新藤兼人監督99歳の新作である。観る前、高齢のためステレオタイプの反戦映画だったら嫌だなと懸念したが、全くの杞憂であった。周りの事象・風俗を極力切り捨てて、主人公とそれを
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