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映画「博士の異常な愛情」(1964年)

博士の異常な愛情

武器を愛するという事は、使ってみるという事だった


スタンリー・キューブリック監督の中期の力作である。60年代のキネマ旬報では、彼の名はカブリックと記されていた事を憶えている。新進監督で発音までは判らなかったのでしょう。
この映画は観直してみて、あの時代を鮮やかに映していると感じ入った次第である。

第一は、当時60年代前半は国の指導者、軍人トップスは間違う事は無いと多くの国民が信じていた事である。彼らは高潔で熟慮を重ねベストの判断を行う人物と私も思っていた。米ソ冷戦下でキューバ危機を経て、ベトナム戦争勃発の頃である。
それが、映画では全員胡散臭い奴ばかり出て来て落差が大きかった。指導者の無謬性への信頼をケチョンケチョンに笑い飛ばしている。

第二は、巨大技術への素朴で盲目的な信仰が強かった時代だったなあと思う。新技術が地球上の人類を絶滅させるかも知れないという洞察力は、恐ろしい位、楽観的に持ち合わせていない。

第三は、民族・政治体制間の偏見やナチのような危険な優生思想が露骨に描かれており、痛烈に皮肉っている。相手を知らない事による妄想や誤解が、疑心暗鬼を生んでいく。

リベラルな考えのキューブリック監督は、強烈なブラック・ユーモアで痛快にこれらを笑い飛ばしていく。
原題は“Dr. Strangelove or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb” 「ストレンジラブ博士、私は如何に(水爆)を心配するのを止め、水爆を愛するようになったか」で日本語題名は、意訳し過ぎているではと思う。

米国戦略空軍基地の司令官リッパー准将(スターリング・ヘイドン)は、狂気に憑かれ、R作戦の開始命令を出し基地に立てこもった。ソ連から攻撃を受けた時の報復指令で、配備されていた50メガトンの水爆を搭載したB52爆撃機34機が一斉にソ連を目指す。
リッパー司令官は自分が疲れやすいのは、ソ連が水道水にフッ素を入れているからだと妄想が膨らんで反乱を起こした。

ペンタゴン戦争室に大統領、タージッドソン将軍(ジョージ・C・スコット)など政府首脳が集まり、対策を協議する。大統領は、ソ連大使を呼び、酔っ払ったソ連首相とのホットライン通話で事態解決を試みるが、アメリカを模倣しDoomsday Device(終末装置)がセットされている事を知る。一たび攻撃を受ければ、水爆による報復装置が解除される事なく作動する。Doomsdayとは、キリスト教でいう最後の審判の日である。
爆撃機の大半は引き戻されるか、ソ連ミサイルで打ち落とされたが、コング少佐の1機のみ通信不能となり、ソ連に突っ込んでいく。

モノクロ映画ながら、爆撃機が飛んでいく様子や飛行機内部の操作シーン、戦争室で壁一面の世界地図に爆撃機が一斉にソ連に向っている様子をランプで点燈させるシーンなどリアルで映像的に優れている。
テキサス出身のストレートなコング少佐がカウボーイハットを被り、核爆弾にロディオのように跨って落ちて行くシーンは、映画史に残る名場面だと思う。初見の時は度肝を抜かれたが、アホで単純なアメリカ人だと感じる気持ちと爽快感が入り混じってしまった。

ピーター・セラーズが、誠実そうだが結局は利己的な大統領、気の弱い英将校副官、奇行のストレンジラブ博士とキャラの異なる3役を演じ、信じられない名演技を見せている。
同じ人に主要な複数の役をやらせるというのは、この戦慄すべき出来事自体が1人の巨きな妄想だったと思わせる意味もあったかも知れないが、セラーズが上手すぎて、3人とも別人に見えた。アドリブ演技が生きて、活き活きしたのかな。

大統領科学顧問のストレンジラブ博士は、ヒットラーへの忠誠が所々に出て来るマッドサイエンティストである。彼の奇行ぶり、終末装置の不可避性や終末後に選ばれた人類が地下鉱山で生き延びる方法を喜びに満ちた表情で説明するシーンなど、異様さを醸して素晴らしい。

ジョージ・C・スコットの将軍は、絶えずガムを噛み、ああ言えばこう言う御都合主義の反共人物である。攻撃命令は取り消せないので、先にソ連を叩いてしまおうと大統領に提案する。浮気相手の秘書と作戦室で電話を交わすところなど軽薄さの極みで、誇張した演技が光っている。

音楽は、次の二曲が効果的に使われている。
爆撃機のシーンは、良く耳にする曲で今回題名を知ったが、“When Johnny Comes Marching Home” 「ジョニーが凱旋する時」という。南北戦争で北軍兵の帰還を祝った曲でリズムの良い弾む感じがし、ソ連へのテンポ良い進撃とマッチしている。

もう一曲は、ラストシーンで流れるヴェラ・リンの明るい歌声である。水爆が次々に爆発する中で“We’ll Meet Again”「また会いましょう」が聞こえてくる。

「どこか、いつか知らないが また会いましょう
 でもいつか光輝く日にまた会うと思う
 いつものあなたのように笑みを絶やさないで
 青空が暗い雲を吹き飛ばすまで 」

大変爽やかで悲劇が中和される感じだが、some sunny dayというところが、奇妙に皮肉ぽく感じる。100年後に地底から出てきた人間が誰に会うというのか。

本作品で描かれている核戦争の危機は遠ざかったように見えるが、今日の地震、原発の巨大災害やテロ紛争は、我々が指導者や巨大技術へどう対応すべきかにつき、再び強く問いかけていると思う。
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まとめtyaiました【映画「博士の異常な愛情」(1964年)】

武器を愛するという事は、使ってみるという事だったスタンリー・キューブリック監督の中期の力作である。60年代のキネマ旬報では、彼の名はカブリックと記されていた事を憶えている
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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

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