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映画「かくも長き不在」(1961年) 

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セーヌ川の波のきらめきの中、戦争の傷跡が浮かび上がる


お盆が近づいてくると戦争映画をしきりと観る。
人は、何故先の戦争をしつこく繰り返し繰り返し描くのか、僅か3~4年の間の出来事なので60年以上経つと不思議に思うこともあるが、人々は死を目前にして凝縮された生の実感を深く感じたからであろう。

この映画を観たのは、40年も前のATG映画館での再映の時であるが、戦争の傷跡を静かに描いてあり、強烈な印象を受けた。
反戦映画だけれども戦闘シーンは無く、アザトい主義主張は抑制され、戦争による個人の悲劇が過去、現在、未来まで続く事を静かに訴えかけている。

原題は“Une aussi longue absence”で日本題名そのままであり、女流作家マグリット・デュラが脚本を書きアンリ・コルピが監督した。アンリ・コルピは名編集者で、アラン・レネの『二十四時間の情事』、『去年マリエンバートで』も担当しておりフランス ヌーベルバーグ運動の中心人物の一人である。

前半は、パリのセーヌ川岸を延々と映しドキュメンタリー風で、後半は女主人公の室内劇に変わり、木に竹を接いだ様な感じを受けたが、全体に静謐さが支配しており大きな違和感は無い。

1960年夏のパリ、パリ祭で軍事パレードが行われる中、人々はバカンスに出かけようとしている。カフェの女主人テレーズ(アリダ・ヴァリ)は、運転手ジャックにバカンスをいっしょに過ごそうと言い寄られている。
ある日、テレーズは店の前を通る浮浪者(ジョルジュ・ウィルソン)に目を留める。十六年前、消息を絶った夫アルベールに似ていると思った。セーヌ川岸沿いに彼の後を追い、ホームレスの小屋に至るが、彼は記憶を喪失していた。
午前中は食うために屑屋、午後は雑誌の切り抜きの趣味で過ごすと言う。
後日、テレーズは男を店に招き入れ、叔母と甥にも見てもらう。「16年前、アルベール・ラングロワは官憲に逮捕され、ゲシュタボに引き渡され、強制収容所に送られた。」と叔母達が話かけても反応薄である。
ある夕方、テレーズは男をディナーに招き、必死で男の記憶を呼び戻そうとする。

二人のダンスシーンで妻が触れる事により知り得た事実、ラストシーンで暗夜「止まれ、アルベール・ラングロワ」と呼びかけられた夫が反応する場面と、観る私達にも彼が戦争で受けた傷の深さを知る事になり、深い悲しみに胸を打たれる。
併せて、妻が長年被ってきた心の傷にも思い到るのである。

それから人は、未来に希望がないと生きていけないと言う事も強く描かれている。
逃げ出したアルベールはトラックに撥ねられたと思うテレーズに「彼は無事だ。町を出た。」
と伝えるジャック。真相は闇の中で、ジャックの優しい思いやりかもしれない。
「寒い季節になれば、あの人はきっと戻ってくる。」とテレーズは希望に顔を輝かせるところで映画は終わる。 

音楽、食べ物が、記憶にまつわる素材として効果的に使われている。

夫が好きだったというオペラのアリア、ロッシーニ作『セヴィリアの理髪師』〈空はほほえみ〉と〈かげ口はそよ風のように〉、ドニゼッティ作『愛の妙薬』〈人知れぬ涙〉である。庶民の生活の中にオペラが溶け込んでいる。
またジョルジュ・ドリューが作曲した二人のダンスシーンでのコラ・ヴォケールが歌うシャンソン「三つの小さな音符」も大変暗喩的である。
「暗闇の中に聞こえてくる あの調べ
あなたの居ない淋しさから よみがえる
それは忘れかけた 三つの小さな音符」
可憐で美しい曲である。

食べ物では、食後のデザートに夫の好物ブルーチーズを出し記憶を呼び覚まそうとする。向こうの人は、チーズのデザートには目がないですね。産地を言っていたが良く分らなかった。

アリダ・ヴァリは、眼の表情が素晴らしく、夫を取り戻そうとする中年女性の一途さ、孤独、後悔、不安、希望等の心の移ろいを、抑制を効かせて見事に演じている。
「夏の嵐」、「第三の男」の演技も良かったが、本作は主人公の気持ちが痛いくらい伝わって来て、本当に素晴らしいと思った。

二人の未来は、アルベールの記憶が戻らない限り、満たされない訳で、戦争の非人道性を叫んでみても虚しくなるような、とても悲しい映画です。

モノクロ映画だけれども内容と映像に深みがあって、映し出される教会、写真の切り抜き、必死で解こうとする縄など暗喩的な表現も多いが、最後に判る主題は圧倒的です。
皆さんにも是非観ていただきたいと思います。
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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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