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映画 「イントゥ・ザ・ワイルド」(2008年) 

イントゥザワイルド

放浪とナチュラリストへの憧れは、何かと血が騒ぐ


ジョン・クラワカーのノンフィクション小説「荒野へ」を性格俳優のショーン・ペンが惚れ込み監督した。ショーン・ペンは、エキセントリックな行動が報道され奇矯な人と見なされているが、映画制作を見る限りでは、低俗ヒット作に迎合しない知性に富んだ人のようだ。この頃は未だマドンナの亭主だったと思う。

少し冗長だけれども、一度観ると忘れられない鮮烈な印象を残す作品である。

アラスカの荒野に一人足を踏み入れ、そこで生活しようとした23歳の青年クリス・マッカンドレス (実名)が、4か月後に遺体で発見される。裕福な家庭に育ち、大学を優秀な成績で卒業した彼が、アメリカを放浪して、文明の外で思索的に生きようとした行動を淡々と描いている。主人公の自分に忠実な真直ぐな生き方は、若者らしく爽やかで多くの人に元気を与え、共感されると思う。

映画を観て強く感じたのは、次の3点である。

1.自然の美しさ
 映画は、アラスカ州スタンピード・トレイルの雪の荒野にマッカンドレスが単身進んで行くところから始まり、折々に過去を振りかえる構成をとる。

 彼が旅したルートは、ジョージア州アトランタの大学卒業後、車でアリゾナ、カルフォルニア、サウスダコダ(穀物集荷場で働く)、車が鉄砲水の洪水に流されヒッチハイクへ切り替え、カヌーでコロラド川下り、メキシコ コルテス海を経て、貨物列車とヒッチハイクで北へ向い、途中ヒッピーの集落に逗留しながらアラスカ州フェアバンクスへ至る。

旅を通じて、アメリカ大陸の広大さ、マッキンレー山脈の雄大さ、山や川、鹿や熊の野生動物、花々や草木の自然の美しさが多く余すところなく描かれている。空、雲、雪、水のみずみずしい表情を観ると、豊かな自然の中での生活もさもありなんかなと実感された。

2.多くの人との出会い
マッカンドレスは、放浪の途中で多くの人に出会い、忘れられない印象を与えている。
彼は、聡明で読書好きで、出会った人に自然体で接し、触媒作用のように影響を与えている。集荷場のウェイン、ヒッピーのレイニーとジャン、孤独な退役軍人のフランツと夫々に壊れかけた心に穏やかに働き掛けて修復して行く。ここは、とても美しいと思う。

主人公が語る「幸福が現実になるのは、他の人と分かち合った時だ」の言葉は示唆に富んでいる。

彼が家を捨てた一因は、NASAの技術者でコンサルタントとして成功した父、思いやり深い母と一見申し分ない環境に見える裏側で、妹が語るには、父には離婚していない正妻がおり隠し通していた事、それにより両親は諍いが絶えなかった事等で、兄妹を深く傷つけたていたからである。彼の自然の中で真実を求める姿には、これらも影響している。
            
失踪を知った両親は深い喪失感に苛まれ、人生を見直す方向に向う事が示唆される。彼らが、本や映画に全面的に協力しているのは、贖罪の気持ちもあるのであろう。

旅は本人だけでなく周りの人も変えていくというのは、真実ですね。


3.ナチュラリストへの憧れ
大自然の中で自給自足し、思索し生きるというナチュラリストへの憧れは、アメリカ人には多いようである。ヘンリー・ソロー、ジャック・ロンドン、トルストイのように、マッカンドレスもそういった真実の生活を送りたいと理想主義者のように願っていた。
我々は籠の鳥のように現代文明に囚われて生きているが、一度この枠を取り外したらどうなるのか、この深い問いは、映画を観終わった後もズッと尾を引いている気がする。

彼は、4月にライフル銃、米10ポンド、リュック1つの荷物を携え、雪の荒野に入って行く。うち捨てられたバスを見つけ、そこを拠点に活動を始める。日記は、良くつけていたようだ。

「最も悲しい出来事」と狩りのエピソードを記している。
人の体の倍もあるような巨大ヘラジカに遭遇し、仕留める場面が出てくる。急いで解体し、川のほとりで燻製を作ろうとするが‥‥。
時間との戦いに敗れ、ハエが卵を産みつけ、蛆が湧き徒労に終る。「ヘラジカなんか撃たなければ良かった」と涙を流し、人間に対する厳しい力の存在を感じたとある。
農耕民族である我々は、このような知見や想像力は全く持ち合わせておらず、タダタダ驚くばかりである。


評論家立花隆が種子島西の無人島で野生生活を過ごしたルポを読んだ事がある。「無人島生活6日間」(「思索紀行」、書籍情報社)。最小の食料品と水は持ち込んだものの、魚は獲れず、食事の準備に一日の多くの時間を費やし、文明の利便性を思い知ったとある。旅立つ前は、自然の中での読書や思索に期待に胸を膨らましていが、雑務の多さに愕然とし本も読めなかったとある。また椅子やテーブルを作って生活環境の改善に努めており、これは抜き難い本能だと語っていた。


マッカンドレスは8月18日に食料の欠乏、毒性植物を食べた事で亡くなっている。川の増水で帰路を辿れず、「荒野の罠に嵌った」と嘆くに至った。
でも4ヶ月弱も荒野での生活を可能とした生活力は、常人を超えた優れたものと思う。
彼の行動を「傲慢だ」、「自業自得だ」、「愚行だ」と非難する人も多いと思うが、それらを超えて、強く心に訴えかけて来るものがある。
多分、自分が知らない世界を知っている人への憧れ、積極的な生き方、冒険への共感からであろう。


尚、主人公は自らをSupertramp(スーパー放浪者)と称し気に入っており、欧米社会ではtrampは一つの伝統なのかなとも思う。またヒッピーの集落など放浪者を受入れているアメリカ社会の寛容さも印象に残った。


本作品は、5章の構成で、出来事がドキュメンタリータッチに描かれている。怜悧な空気感も伝わって来て、静かな良い作品だと思う。 

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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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