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映画 「豚と軍艦」 (昭和36年)

豚と軍艦

男たちが右往左往する一方、女たちは逞しく生きていく


今村昌平監督の五作目の作品である。今村作品は劇場で多くを観ているが、違和感というか取っ付き難さを感じる事が多かった。社会の底辺を描き、登場する人間達も卑小な者ばかりで、映画に新しい世界や楽しさを求める側からは、面白くないという印象であった。当時は、日本人の原像を求める彼の問題意識が良く解らなかったのだが‥‥。

彼の作風が変わったと感じたのは、「復讐するは我にあり」(1979年)からで、これまで画面に見られた猥雑さが影をひそめ一種の格調高さが生まれていると感じた。観客を突き放したような問題意識はそのままであるが、主題はより明解になっている。

最近「教育者・今村昌平」今村昌平著、佐藤忠男編者(キネマ旬報社2010年) を読んだ。
彼が1975年から始めた日本映画学校の経緯を描いた本だが、技術陣含めた映画人を育てる使命感・情熱が伝わって来て胸を打たれた。三池崇史監督もここから出ている。
また彼が組織の卓越したリーダーである事も再認識した。こういった資質を持っているのは、映画監督では他に大島渚くらいであろう。

今村昌平監督は、日本人の根っこにある何世代に渡っても変わらぬもの、現世利益尊重で卑小に見える人間達を描き続けてきたと思う。
会社を上手く使い、時には妥協して、自分の作りたいもの、世に問いたいものを作り続け、後進も育てた志の高い監督として、私の中では再評価するようになっている。


さて「豚と軍艦」である。
横須賀の米軍基地周辺に巣食うヤクザの話である。日森組は、日米畜産協会を作り、基地から無償で残飯を提供してもらい豚を飼育して儲けようとする。勿論、怪しい仲介者へリベートを払うのだが。流れ者のヤクザ春駒を殺し、死体の処理を巡って、親分(三島雅夫)、兄貴分鉄次(丹波哲郎)、以下 大坂志郎、加藤武、小沢昭一、チンピラの欣太(長門裕之)らが、ドタバタを繰り広げる。
皆、自己保身の狡い連中ばかりだ。その中で丹波哲郎は背中に南無法蓮華教の刺青をもつ強面の頼れるヤクザと描かれるが、胃炎を余命3日の胃ガンと信じ込み、生きるの死ぬのと大騒ぎを巻き起こす。
死を前にしたと思い込んだ人間の滑稽な行動が、威圧感のある平素と大いにギャップがあり、大いに笑わせる。

取り巻く女性陣は欣太の近所の恋人 春子(吉村実子)、米将校オンリーの姉 弘美(中原早苗)、母親(菅井きん)、鉄二の内妻(南田洋子)で、皆自己主張が強く、生活力に溢れている。
春子は、母親から姉のように米兵のオンリーになるよう求められるが(母親の「(二号になって)、女の道を通すんだ」には苦笑)、欣太に「ヤクザなんてカス、川崎に出て、職工のまっとうな生活を始めよう」と働き掛ける。しかし、欣太と春子は、気持ちと行動のすれ違いが多く‥。

最後は、集めた金を持ち逃げされた日森組が二つに割れ、豚を取り合いする中で、親分、兄貴分達に良いように差配されてきた欣太の怒りが爆発し、機関銃をぶっ放す。
放たれた数百頭の豚たちがドブ板通りを埋め尽くし、ヤクザ達を踏み潰していく。欣太も銃弾を受け水洗便所で死んでゆく。

オオカミが豚を食い物にする話が、最後はオオカミたちが豚にやられてしまうという寓話で、60年安保の米軍基地の町を舞台にして、アメリカに骨抜きで依存する日本の姿も強く示している。

社会の矛盾を笑い飛ばす重喜劇を作り出したとあるが、今観ると作者の意図が見え過ぎる欠点を感じる。豚の迫力も弱いし、少しもどかしい。
むしろ、男たちは頼りなく右往左往しているが、女たちはシッカリ腰を据えた逞しさが強く浮かび上がっている。今村監督の終生のテーマが上手に描かれている。

ラストシーン 米軍艦隊の入港にあわせて、稼ごうと女たちの一団が横須賀駅に降り立って上陸米兵に嬌声を上げる。一方、春子は吹っ切れた様に川崎に向けて毅然と旅立っていく。鮮やかな対比である。


横須賀市と米軍の協力が得られなかったので、どぶ板通りの大オープンセットを日活撮影所に作り撮影したとある。最初にカメラを引いて米兵が闊歩する大通りの様子を映し出すが、本物と見間違う位 上手く出来ている。
撮影は名手 姫田真佐久、今村作品を多く担当して、「戦争と人間」などでも印象深い。ヤクザ達が西村晃の工場に取り立てに行くシーンをワンショットで撮ったり、吉村実子が米兵にホテルに連れ込まれるシーンでカメラを回転させ示唆するなど工夫を凝らしている。

出演者は、曲者ぞろいで今観ても面白い。その中で主演の吉村実子は光っている。当時、高校二年生で初出演だが、物怖じせず存在感が抜群である。吉村真理の妹で、NHKテレビドラマ「あうん」のフランキー堺の奥さん役の抑えた演技が素晴らしかったのを憶えている。
今村監督の早稲田大学演劇の同級生 加藤武、小沢昭一も登場し、加藤武は死体をものともしない気味悪さが際立って怪演である。

再見して懐かしい顔を見出した。近所のエプロン婆さん役は武智豊子、小柄だがクリクリした眼とだみ声が忘れられない。NHK TV「お笑い三人組」にも常連で出ていたっけ。
鉄次の弟役はTVドラマ「7人の刑事」の佐藤英夫、共産党にかぶれた人の好い理想主義者だが、現実派の南田洋子に言い負かされる役を演じている。

音楽は、今村監督の作品を殆どカバーしている黛敏郎である。アメリカ国歌、勢いの良いマーチから始まり、小林旭のズンドコ節など当時の歌謡曲が流れる中、まだ控え目な音楽を書いている。
春子が欽太の部屋にパイナップルの缶詰を持ち込み、一緒に食べるシーンに、モノトーンの抒情的な曲が流れる。これは中々の佳曲である。

本作には、助監督に浦山桐郎が付いている。今村とは、「果てしなき欲望」、「にあんちゃん」と師匠・弟子のコンビで深く協力しあっている。この後、浦山が「キューポラのある街」で初監督になった時は、脚本を共に書いてあげている。今村の作風が、人々を突き放したように描き、それでも逞しく生きていくだろうと思わせるのに対して、浦山は人々に寄り添って、暖かな眼差しを示す。師弟でも作風が違い、面白いなと感じた。


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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

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