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映画「危険なメソッド」(2012年) 

危険なメソッド

自分でも解からない心の奥底が見えるというのは、幻想ではないか? 実話ならではの面白さはあるが‥



20世紀の精神医学の巨人、ジークムント・フロイトとカール・グスタフ・ユングの二人を描いた映画という事で、大変興味を持って観た。彼等について、殆ど予備知識が無かったので、最後のテロップで登場人物含めて実話である事に些か驚いた。

前半は緊張感に富み面白いが、渡米以降の後半は変化に乏しくややだれる。学者の世界は、学術内容に踏み込まないと、変化に乏しく、面白く描けないのか。
映像は、大変美しいもので、建築、書斎、衣装含めて素晴らしく、一見の価値はあると思う。世紀末の欧州文明の爛熟、退廃の感じは受けなかったが‥


スイスの精神病院に若きロシア女性ザビーナ・シュピールライン(キーラ・ナイトレイ)がヒステリーの錯乱状態で運び込まれ、勤務医ユング(マイケル・ファスベンダー)が、治療に当る。彼女は、下顎を突き出し極度の興奮状態で手が付けられなかったが、当時フロイト(ヴィゴ・モーテンセン)が提唱していた対話療法で彼女のトラウマを掘り当て、治癒の効果を上げていく。ユングは、ザビーナを助手として使って、彼女の優れた知性を知るに至る。
快癒したザビーナは、医学を目指すが、ユングを挑発し、彼に不倫を迫っていく。
ユングとザビーナの心の動きは、彼等が思った程は、こちらに伝わって来ないもどかしさを感じた。

ユングは、敬愛するウィーンの開業医フロイトの下を訪ね、13時間にわたって親しく語り合う。二人は父子にも似た関係を築き、緊密な文通を重ねる。医学会から疎外されていたフロイトを、ユングは熱心に支持し、ザビーナの誘惑、不倫関係も打明けている。
二人はアメリカからの招待を受け、渡米する。この旅行は、アメリカ社会に精神分析学を植付け、世界の心理学会が動き出す契機となったと聞いている。
その後、ユダヤ人の反撥を恐れたフロイトは、ユングを初代会長に国際精神分析協会を設立するが、二人の関係は考え方の違いから決裂していく。

二人の絶縁は、フロイトがユングと別れたザビーナを弟子に採用して指導した事も影響している。後日、ザビーナは、精神的に病んだユングの治療も行っている。彼女はロシアに移って、児童心理学者として活躍した。

ユングとザビーナの関係は、ザビーナの日記、書簡が発見され1993年のノンフィクション本で明らかになったとの事である。またフロイトは、熱心な手紙の書き手で、ユングとの書簡も多く残されている事からこの映画が構想された。


映画のフロイトの考えは、夢判断の場面も多く出てくるが、無意識の行動を何でもリビドーで説明しようとする演繹法の手法に思え、ヨーロッパの文明が生んだがっしりした論理学の世界を思わせる。
一方、ユングは、森羅万象を受け入れ、オカルトの世界にも理解を示し、人の奥底に、解明出来ないものもあることを暗に認めている。こちらは帰納法の世界のようだ。
こういった考え方の違いを、フロイトは科学的でないと拒否して永訣に繋がっている。

それにしても三人が、連環のように時に立場を入れ替えて、治癒者と被治癒者になる姿は、仏教で説く輪廻のようで興味深かった。

三人の演技は素晴らしかったが、ヴィゴ・モーテンセンの葉巻愛好家フロイト役は圧巻であった。
フロイトについては、昔、中野好夫氏の評伝「人間の死にかた」(1969)で、第二次世界大戦中、ロンドンに亡命し、口腔癌で、手術で上顎を抉り取った後も葉巻を離さず、患者の診察を続けた鬼気迫る姿を読んだ事を思い出した。

デヴィッド・クローネンバーグ監督は、難解なスタイリッシュな映像が多かったが、本作も含め前作の「イースタン・プロミス」あたりから明解さが出てきたように思う。今後も目が離せず、楽しみである。

最後に、「危険なメソッド」の題名はどうだろうか。
“A Dangerous Method” の直訳だが、安直過ぎて、日本人には意が伝わらない気がする。
Method は、方法と訳されるが、manner, process, technique, program, practice, scheme, arrangement, mode のどれだろうか。ここでは治療法 セラピー“therapy”とした方が解かりやすい気もするが‥。
ご存知の方は教えて下さい。

本作は、本年度の刺激的な秀作だと思う。是非一見をお勧めしたい。

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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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