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映画「ハワーズ・エンド」(1992年)

howards end2


人は、お互いに理解し、偏見を持たずにいられるのだろうか?


『ハワーズ・エンド』は、英国の文豪E.M.フォスター(1879-1970)の作品をジェームス・アイヴォリー監督が忠実に映画化したものである。アイヴォリー監督は、同作家の『眺めのいい部屋』、『モーリス』も撮っており、心底惚れ込んだ作家のようだ。
昔、観て好印象を持ったのだが、細部を忘れており、今回、小説を読んだので、再び観てみた。映画のストーリーは小説とほとんど同じだが、小説のほうが豊饒な会話を書き込んであり、人物像がクッキリ浮かび上がるのに対して、映画は自然の美しさを上手く描いてあるのに感心した。

ハワーズ・エンドとは、ロンドンから数十キロ離れたハーフォード州郊外の「古くて小さくて何とも感じが良い赤煉瓦の家」の名である。
20世紀の初頭のイギリス、三つの階層の違う家族が登場し、交差し、ハワーズ・エンドを舞台に運命的な出来事が起こる様を淡々と描いている。

シュレーゲル家は、コスモポリタン的な半ドイツ系の食べるに困らない資産を遺された三人姉弟である。姉マーガレット(エマ・トンプソン)、妹ヘレン(ヘレナ・ボナム・カーター)、学生の弟ティービーとロンドンのウィッカム・プレースに暮らしている。
主人公のマーガレット(メグ)は、教養があり、美や文化的なものを求め、友人達を招いて議論を楽しむ30歳前の開明的な独身女性である。


映画は、この一家がドイツでウィルコックス家と知り合って、ハワーズ・エンドで次男ポールと妹ヘレンが一時恋沙汰を起こして気まずい関係になるところから始まる。
状況を探るため、ジュリー叔母がコメディタッチで登場する。
ヘレンがメグに宛てた手紙が発端だが、この頃は何でも手紙で知らせたのですね。

上流中産階級のウィルコックス家当主ヘンリー・ウィルコックス(アンソニー・ホプキンス)は、自力で成功した実業家だが、美や文化には無関心で、二男一女がいる。
妻ルース夫人は、生まれ育ったハワーズ・エンドとその豊かな歴史を愛し、家族の中で唯一芸術の理解者である。しかし家族は、その家の抽象的価値には関心が無い。

ウィルコックス家がメグの近くに引っ越して来たことより、ルース夫人とメグは、人間に対する理解力としっかりした判断力がある人とお互いに認め、魂が惹かれるような仲となる。
ルース夫人を演じるヴァネッサ・レッドグレーブは、何とも柔らかな老婦人を演じており、メグがデパートでクリスマスプレゼントを選んであげるシーンは印象的である。

第三の家族として、下層階級の若きレナード・バスト夫婦が出てくる。
レナードは保険会社の事務員で、派手な無教養の妻と貧しい暮らしをしているが、文学や美に憧れている。音楽会で偶然マーガレット、ヘレンと知り合うようになって、偏見の無いマーガレットは、彼を家に招き、彼に気を配ろうとする。

ルース夫人が死の床に着いた頃、メグ達は地区開発でウィッカム・プレースの立退きを迫られ、引越し先を探すことになる。
ルース夫人が亡くなって、マーガレットにハワーズ・エンドを遺すと遺言したことで物語は、大きく展開していく。

遺言はウィルコックス家に握りつぶされたが、水と油のように思われたヘンリー・ウィルコックスが、何回も会う内に、マーガレットに求愛し結婚するに至る。
レナードはヘンリーの間違ったアドバイスで失職し困窮するが、高慢なヘンリーは下層の彼に見向きもしない。同情したマーガレットとヘレンは、彼を救おうとするのだが…。
マーガレットとヘンリーの結婚式で、レナードの妻が現れヘンリーとの昔の関係が露呈したり、ヘレンはレナードの子を宿しドイツに旅立ったりと、ドラマは大きく動いて行く。
その果てにハワーズ・エンドで大きな悲劇が起こる。

最後は、一年半後は、ハワーズ・エンドはメグのものとなり、残された者達は和解し、ヘレンの赤ん坊を隣家の坊やが世話している姿をメグとヘレンが幸せそうに見守るシーンで終わる。

この映画は、階級を超えて、人と人は理解できるかという大きなテーマで、その努力と限界を温かく描いている。
その中心人物がマーガレットで親和力を持って、人と人との繋がりを高めようとする。ここでのエマ・トンプソンは、とても魅力的に見える。
E.M.フォスターは理想主義的ではあるが、『インドへの道』でも民族を超えた人間同士の理解を問うており、本作でも同じテーマを取り上げている事に胸が熱くなった。


この映画は、英国人俳優によって演じられ、エレガントな落ち着いた雰囲気を醸し出して人物模様は魅力的である。帽子や衣装も大変華やかで美しい。
また自然を美しく撮っており、草花に囲まれたハワーズエンドの風景やレナードが美に誘われて夜ロンドン郊外を彷徨うシーンなど素晴らしい。

尚、映画前半でベート-ヴェンの第五交響曲(第三楽章)の演奏会が描かれ、ドラマが起こりそうで少しワクワクさせられるが、原作では、この音楽を「妖怪どもが跋扈している中、神々が巨大な剣を振るって戦い、戦場が色彩と香気に満ち、華麗な勝利があり、壮烈な死があった。そして妖怪どもは消え去った」と巧みに形容している点には感心した。『運命』という俗な題名に引きずられやすいが、確かに妖怪が徘徊している響きに聞こえる気もする。

ヘンリーとマーガレットはお互いのどこに惹かれて結婚したのだろうか。ここは良く描かれていないので、2回目を観てもヘンリーの求婚は唐突な感じが否めなかった。
ストランドにある料理屋シンプソンでのランチが伏線になっているようだが。

映画は、大英帝国の豊かな時代を背景に大河小説のようにゆったりと物語が流れるので、この雰囲気が好きな人には好適と思われる。またイギリス人の家と自然へのこだわりも上手く描いており、教えられることも多かった。
第65回アカデミー賞の主演女優賞、脚色賞、美術賞を受賞した秀作である。
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映画、クラシック音楽、料理、ゴルフが好きな中高年男です。 家猫1匹、外ネコ3匹に遊んでもらっています。

ボクダノビッチ

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